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「引退の概念を覆す」本田選手が語った”引退”

――本田選手が2018年にカンボジア代表のGMに就任しましたが、木崎さんはそこのスタッフも務めていましたよね。

木崎 あれも当初はメールマガジンの取材の一環で現地へ行ったのがきっかけでした。取材で質問をしていたら初合宿の最終日に「頭が整理された」と言われ、「次からも質問役で来て欲しい」と。つまり本田選手の指導やミーティングで疑問に思ったことを質問して「メタ認知」を手伝うのが僕の役目です。ベンチに入るには肩書きがいるので、カンボジアサッカー協会からはビデオアナリストという肩書きが与えられました。経費以外のお金が出ないボランティアなのですが、現地で見聞きしたことはそのままメルマガのネタになるので、取材感覚でカンボジア代表の手伝いをしていました。

2018年にはカンボジア代表のGMに就任した ©FFC

 初合宿で覚えているやりとりをあげると、本田選手が「5秒ルール」(ボールを取られてから5秒間は相手選手へプレッシャーをかけボールを奪い返そうとすること)を採用することについて何か疑問はあるかと訊かれたときに、「一般的にはいい攻撃ができないと相手が崩れていないから成立しないと言われている」と答えたんですね。他の監督は普通はどうしているとか、一般的にはどう言われているかという点で、参考になるところがあったのかもしれません。

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――カンボジア代表のGMに就任した2018年といえば、本田選手が日本代表選手として挑んだ最後のW杯の年でもありました。「そろそろ指導に専念しようかな」と引退を示唆する発言はあったのでしょうか。

木崎 いいえ。以前、本人が「引退の概念を覆す。50歳くらいまで選手を続けたい」と言っていたので、引退はまだ先のことだと思いますね。今は半月板の治療が終わって、所属するチームを探しているところです。オファー自体はたくさん来ているそうなので、条件に合ったチームがあれば契約すると思います。

2018年にはカンボジア代表のGMに就任した ©FFC

――50歳! それはすごい。ただ、本田選手が事あるごとに言っていた「世界一のサッカー選手になる」という野望からは遠ざかっている気がします。彼は夢をあきらめてしまったのでしょうか。

木崎 確かに、彼のサッカー選手としての旅は2018年のロシアW杯で代表からの引退を表明して1つの区切りを迎えました。ただ、彼は今も首尾一貫して「一番になること」を目指しています。長年本田選手を取材してきて、その「一番になること」には彼なりのルールがあることもわかりました。またそれが本田圭佑という人間の面白いところでもあったんです。(後半に続く)