モータリゼーションによる輸送手段の変化や地方都市の過疎化などの影響で、昭和から平成にかけて多くのローカル線が廃止されてきた。戦後から75年の間に、およそ400もの路線が姿を消したという。

 石川県小松市にかつて存在していた「尾小屋鉄道」も、移り行く時代の流れに飲まれて廃線となった鉄道のひとつだ。

 しかし、1977年の廃線から45年以上たった今も遺構が残り続けており、熱心なファンが遠方から訪れるほどの人気スポットとなっている。

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石川県小松市にある「尾小屋鉄道」の廃線跡(写真=坂井稔樹さん提供)

 いったい、尾小屋鉄道の遺構はどのような形でその姿を保ち続けているのか——。

 文春オンライン移動編集部は石川県小松市を訪れ、「なつかしの尾小屋鉄道を守る会」の会長・坂井稔樹さんの案内のもと、現地を探訪した。

尾小屋鉄道開業当時の客車が保存された「ポッポ汽車展示館」

 スタート地点は、尾小屋鉱山資料館に併設されている「ポッポ汽車展示館」。尾小屋鉄道の蒸気機関車「5号蒸気機関車」、気動車「キハ3」、客車「ハフ1」の3両を旧尾小屋駅跡地から移設して、2002年4月にオープンしたのがこの展示館だ。

 坂井さんによると、「客車『ハフ1』は、尾小屋鉄道開業1年前の1918年に用意された車両が、当時の姿のまま保存されている」という。

尾小屋鉱山資料館に併設されている「ポッポ汽車展示館」

 尾小屋鉄道を走っていた気動車「キハ3」は動態保存されており、年に数回、体験乗車会で実際に乗ることができる。ちなみに現在、この「キハ3」を運転できるのは坂井さんを含めた2人だけ。尾小屋鉄道の歴史を継承するためには、後進の育成をする必要があるそうだ。

坂井さんが特別に気動車「キハ3」を動かしてくれた

 続いて向かったのは、尾小屋鉄道の廃線跡。かつて尾小屋鉄道が走っていた場所は、現在、国道416号線として利用されている。そのため、国道416号線の近辺が“遺構スポット”となっている。

 取材班は坂井さんの先導で、国道416号線沿いの林の中を探索した。どうやらこの場所に、鉄道ファンや写真家に人気の“廃線跡”があるらしい。