捜査の邪魔をしないようにということもあって、編集部はいったん日刊紙「リベラシオン」の社屋に間借りしていたが、9ヵ月後に新しい場所に引っ越した。住所は秘密になっているが、パリ市内で、大通りから離れた路地裏にあり、二重扉、装甲窓で厳重に安全が守られている。また関係者には護衛がついている。
2018年にRissは、警備費として年間100万から150万ユーロ(1億4000万から2億1000万円)かかり、その支払いのために週に最低1万5000部売らなければならない、と読者に訴えた。
いまも「個人的に感化された者」たちによる襲撃は続き…
しかし、それにしても、大丈夫なのだろうか。
シャルリー・エブドを襲った犯人と、これと連携してユダヤ食品店に立て籠った別の犯人はともに射殺されたが、彼らを幇助したとして13名が起訴された。
その裁判が始まった2020年9月2日付の紙面に、シャルリー・エブドは、そもそものはじまりであるイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を再掲載した。すると、15日に事件現場となった建物前で休憩中のまったく関係のない2人が襲われ負傷する事件が起きた。犯人はシャルリー・エブドが移転していたことを知らず、社員への報復のつもりだったという。
その1ヵ月後10月16日には、シャルリー・エブドの風刺画などを生徒に見せたパリ郊外の中学教師サミュエル・パティ氏が殺害された。
現在、アルカイダやISの組織的なテロは収まっているが、このような個人的に感化された者による犯罪はつづいている。
ウクライナ侵攻問題も加わった欧州…シャルリーはさらなる“火種”になっていくのか?
それだけではない。特にいま、ウクライナへの侵攻でロシアを支持するイランとの関係は前にもまして悪くなっている。
フランスでは、イランの反政府・女性解放運動への関心は高い。
パリ市は10月に故アミニさんを名誉市民にしている。1月16日には、エッフェル塔に「女性、生命、自由」「イランの処刑ストップ」とイルミネーションをし、「(イランの)政権がデモ参加者の処刑を続ける中、自由のために勇敢に戦う人々へのオマージュ」(パリ市広報)をした。
また同じ日、欧州議会のあるドイツ国境の町ストラスブールでもデモがあった。欧州議会はイランのイスラム革命防衛隊をテロリスト組織に指定するように求め、フォン・デア・ライエン欧州委員長も賛同している。
個別のテロ行為にとどまらず、今後日本を含めた“西側”の懸案事項になっていくかもしれない。