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有田 う~ん、ないですね。まず、当日何をするかもわからないので、ネタを知ってからじゃないとどうにもならない。空耳を撮っているディレクターさんご本人が言っていましたけど、「君たちは空耳俳優であって、他の演技がどこまでうまいか――と言われれば、たぶん下手だと思う。ただ、僕も空耳を撮ることは慣れているからうまいけど、他のPVとかを撮らしたら下手だと思う」と。

 だから、「空耳の演技だけに特化してほしい」ってことを伝えられたときがありました。空耳の作品として、どうしたら全力を尽くせるかは考えますけど、演技プランみたいなものってないんですよね(笑)。それに、全力を出したものでも、オンエアされないときもありますから。

©文藝春秋

ときには没ネタも…不採用の「意外な理由」

――やっぱりお蔵入りになるものもあるんですか?

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有田 一回、本物の生きたスッポンを股間の前に当てて、スッポンポンで踊ってくださいという撮影があったんですよ。真冬に全裸になって、屋上でスッポンで股間を隠しながら踊って。結構、大変な撮影だったのにオンエアされなかったから、「何がダメだったですか?」って聞いたんです。そしたら、「寒さでスッポンの首があんまり出てなかったから」って(笑)。

――まるで黒澤明じゃないですか。ちょっと雲が出ているから撮らないみたいな。

有田 ほんとに空耳組として仕上がっているんですよ。僕らにはわからないこだわりでNGになることもあるし、ベテランのカメラさんが、「こっちのほうがいいよ」ってカメラをのぞきながら、ディレクターさんにアドバイスすることもある。

「空耳アワー」撮影現場の温かさ

――やってることがキャメラマンで、木村大作なんですよ(笑)。

有田 「これは落ちるな。オンエアされないな」とかわかるみたいで、カメラさんがそう予言した作品って、大概落ちるんです。空耳って、こだわりを持ったすごいスタッフさんが集まっている。ですから、僕はスタッフさんに恵まれたなと思っています。やっぱりあれだけ愛される番組を作っている人って、みんな優しい。カプサイシン入りのローションはどうかと思うけど(笑)。

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 僕が出る以前って、そんなに芸人が登場することがなかったみたいなんですね。僕はそんなこと知らないから、いつものノリで「飲みに行きましょうよ」なんてスタッフさんに言ったら、新鮮だったのかどうかわからないですけど、すごい仲間に入れてくれて。

 ハウフルス(『タモリ倶楽部』に携わる映像制作会社)の忘年会においでよとか誘っていただいたこともあったし、 空耳俳優で忘年会を企画したときに、「安斎さんに声掛けてあげるよ」とかスタッフさんが取り持ってくれました。毎年、気を遣ってくれて、「アリタメン、今年はどう?」って連絡をくれたりする。やっぱり『タモリ倶楽部』と「空耳アワー」は、僕にとってかけがえのないものなんですよね。

写真撮影=橋本篤/文藝春秋

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