「俳優は、一度、映画監督を経験してみた方がいいんじゃないかな。そう思えるくらい充実していたし、とても勉強になりました」
俳優の玉木宏さんが、初めて“監督”を務めた映画『COUNT 100』が、WOWOWにて2月11日に放送・配信される。これは「アクターズ・ショート・フィルム3」の中の一作品。この企画は、5人の俳優が、予算や撮影日数など同じ条件で25分以内のショートフィルムを制作し、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」のグランプリ、“ジョージ・ルーカス アワード”を目指すというもの。第3弾となる今回は、玉木さんのほかに高良健吾さん、土屋太鳳さん、中川大志さん、野村萬斎さんが監督に挑戦した。
俳優だけでなくカメラマンとしても活動するなど、幅広く活躍している玉木さん。本作では半年近い時間をかけて、脚本から準備をしていった。
「今現在の僕が思っていること、感じていることをメッセージとして込めたいと考えました。それは、今いる場所でやれることを精一杯やるのが、いかに大切かということです。自分の仕事や存在が、替えがきく誰かに取って代わられる――それを意識するのは、僕たち俳優にとって、とても恐ろしいことです。コロナ禍で、この思いは一層強くなったかもしれません」
もともと、玉木さんは、ボクシングは観るのもやるのも大好きで、ボクサーの知人も多かったという。
「僕の思いが、現役や元プロボクサーが日頃抱えているものとリンクしていると気づいたんです。ボクサーは、誰よりも凝縮した人生をリングの上に求めている。それで、ボクシングを今回の作品のテーマに決めました」
主演は林遣都さん。ボクシング経験者と聞き、キャスティングした。林さんは、かつて日本ライト級チャンピオンだったものの現在は落ち目のプロボクサー・加護光輝と、彼の人生を左右するキーパーソンの二役を演じる。
「劇中で実際にボクシングをするシーンはそれほど長くないのですが、絵作りにはこだわりました。わずか数分のラウンド、数秒のパンチに命をかけるボクサーのリアリティーを出したかった。ですから、近年、ボクシング映画やドラマで引っ張りだこの松浦慎一郎さんに、ボクシング指導兼ジムのトレーナー役として入っていただけたことは、とてもうれしかったですね」
ラブシーンでは、監督の玉木さん自ら、演じる俳優たちの不安を和らげようと、詳細な絵コンテを描いて説明した。
「監督は本当に何から何までやるんです。ロケ場所から、セット内の内装やテーブルの高さまで、すべての決断が求められる。おかげで、監督が映画にとってどれだけ重要な存在なのか、身をもって実感できました」
主人公の光輝がとった行動とは。その結末は、「あなたならどうする?」という問いを鋭く投げかけてくる。
たまきひろし/1980年愛知県生まれ。98年俳優デビュー。2001年に映画『ウォーターボーイズ』、03年にドラマ「こころ」、06年に「功名が辻」「のだめカンタービレ」など話題作に相次いで出演し、評価を高める。現在、出演映画『ブラックナイトパレード』が公開中。『キングダム 運命の炎』は7月28日に公開予定。
INFORMATION
WOWOW「アクターズ・ショート・フィルム3」
WOWOWにて2月11日(土・祝)20時放送・配信
https://www.wowow.co.jp/movie/asf/