ジャズに魅了された男、宮本大が世界一のジャズプレーヤーを目指す漫画、『BLUE GIANT』。待望のアニメ映画がまもなく公開される。

 シリーズ累計920万部を超える漫画の映像化ともなれば、実写化やTVシリーズ化など様々な選択肢があったはず。しかし原作サイドがこだわったのは「最大の音量、最高の音質で、本物のジャズを届けたい」ということだった。それが最良の形で実現できるアニメーション映画での製作が叶ったことについて、原作者の石塚真一さんはこう語る。

石塚真一さん

「このオファーを受けられたことは非常に幸運でした。アニメ映画だったら音楽表現の幅が広がりそうだし、いろんなことをやっていただけるかも、という話は以前からしていたんです。演奏シーンも、映画館のように大きなスピーカーのあるところで聴いたら、きっとジャズに包まれるような特殊な体験になるんじゃないかと思いました」

ADVERTISEMENT

 映画の脚本を担当したのは、連載開始前からの石塚さんの担当編集者で、現在はストーリーディレクターとして作品に名を連ねているNUMBER 8氏。これは石塚さんの希望だった。

「この作品を映画化する上での、僕の最大にして唯一の条件だったんです。この人が脚本を書くんだったら受けます、と。いちばん『BLUE GIANT』のことをよく知っているし、彼が書けないわけもないし。だから、『好きなように書いて』って丸投げしちゃったんですけど、あがってきた脚本は納得のいくものでした。ラストがちょっと原作とは違うんですけど、その場面も見たいと思った。脚本に関しては、本当に彼に任せっぱなしでしたね」

 世界的ピアニストの上原ひろみさんが作中音楽を手がけ、ピアノの演奏を担当したことにも注目が集まる。

「『BLUE GIANT』の1巻が出たあたりで、上原さんにお話を伺う機会があったんです。その時から気にかけてくださっていて、連載中もいろいろ助けていただいていたので、映画の話が来たとき、音楽はまずは上原さんにお願いしなくてはと思いました。ありがたいことに、快く引き受けてくださったんですが、演奏シーンも細かくチェックする必要があって、相当大変な作業になったみたいです。上原さんだけでなく、携わっている方みんなが本当に苦労された映画だと思います」

 この映画によって初めてジャズに触れる人も多そうだ。

「欲をいえば、今年が『ジャズ元年』みたいな感じになったらいいなと。もともとジャズが好きな方に観ていただきたいというのはもちろんあるんですけど、僕は特に子どもたちに『こんな音楽があるんだ』っていうことを知ってもらえたら最高だと思ってるんです。それは漫画を描いているときから考えていたことで、上原さんとも『もしかしたら、(主人公の)大に影響されて頑張る子が出てくるかもね』なんて話していました。この漫画や映画をきっかけに将来ジャズプレーヤーが生まれたら、これほど嬉しいことはないですね」

いしづかしんいち/1971年生まれ、茨城県出身。20代でアメリカ留学、帰国後は会社員を経て、漫画家に転身。現在は「BLUE GIANT」シリーズのアメリカ編となる『BLUE GIANT EXPLORER』(story director NUMBER 8)を連載中。ほかの作品に『岳 みんなの山』。

INFORMATION

映画『BLUE GIANT』(2月17日公開)
https://bluegiant-movie.jp/#modal