「このレントゲンを見る限り、子どもは諦めるしか……」元セクシー女優の麻美ゆまが、境界性悪性腫瘍と診断されたのは人気絶頂の25歳のときだった。すぐに手術が行なわれ、子宮と両卵巣を摘出した後、抗がん剤を投与。あれから10年。どのように過ごし、今何を思うのか。(全2回のうち2回目/前編を読む

撮影 鈴木七絵/文藝春秋

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検査が終わると先生がすごく深刻そうな顔で私を見て……

――2013年1月末。4月に行われる恵比寿マスカッツの解散ライブの準備を進めているときに、異変を感じて病院で受診された時のことを教えて下さい。

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麻美 お腹の痛みは全然なかったんですけど、ずっとくだしていて、お腹が張っているような感じがありました。それに、何となくお腹も膨れていて。自分では、胃腸炎か何かだろうと思って、胃腸薬を飲んでいたんですけど、全然治らなかったんです。周りの勧めもあって、1月末に病院に行ったのがはじめですね。

――はじめは何科にいかれたのでしょうか?

麻美 総合診療科に行って、そこから婦人科を紹介されると、「超音波検査しましょう」「CT撮りましょう」って、次々に検査が続いたんです。私は大事じゃないだろうって思っていたから、「なんでこんなに検査ばっかりするの? 忙しいし、早く帰して 」って感じだったんですけど。

 ただ、その日の検査が終わると、先生がすごく深刻そうな顔をしてこっちを見て。

「最近、周りから痩せたって言われませんか?」って聞かれて、初めてオヤオヤ……ってなって。「ちょっと進行しているものがある」と、言われました。

 病院から帰宅して、すぐに自分と近そうな症状を検索していくと、「卵巣がん」っていう言葉がでてきたんです。もしかしてこれなのかな……? いや、そんなことない! ネットで調べれば調べるほど、負のループにはまっていきました。

それ、本当に私のことですか……?

――その後、受診から病名がわかるまで、どれくらいの期間が掛かったのでしょうか?

麻美 2月1日に結果がでたので、初めて病院を受診してから全部で1週間くらいだった気がします。

 先生の説明では、「卵巣がん」は、お腹を開けるまでは正確な診断がつかないそうですが、レントゲンを見る限り、10人中10人の先生が「卵巣がん」っていうくらいの状態だと思って頂けたらって言われました。そのまま先生の説明が続き、「卵巣がん疑い」として手術を行い、子宮と卵巣を全摘出。悪性の腫瘍が直腸まで広がっている可能性が高いので、浸潤(広がり)によっては、人工肛門をつける選択もでてくるって急に言われて。

 え? 人工肛門? 悪性の腫瘍……? ちょっと理解と感情の整理が追い付かない。そこで今後の流れを説明されても、気が動揺しちゃってそれどころじゃない。自然と涙が出てきちゃって、なかばパニック。もう、あまりにも急展開過ぎちゃって。いやいや、私、この2週間前まで、ただのお腹が張っているだけの人だったじゃん! それが、いきなり子宮卵巣全部取ります! 抗がん剤治療です! 手術の予定日は……って言われても、なんのこっちゃみたいな。それ、本当に私のことですか?って感じでした。