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 オアインが働く鳥栖市には、1985年に開通した九州自動車道「鳥栖ジャンクション」がある。九州一円に半日以内で到達する「九州のヘソ」だ。その立地の良さから、食品製造工場や物流倉庫が鳥栖インター周辺に集まっている。

 ベトナム出身のグェン・ティ・ビック(27歳)も、鳥栖市内の食品製造工場で働く実習生の1人だ。就業時間は午前9時から午後6時。働き始めて4年目になるが、来日当初から同じ作業を続けている。ベルトコンベアに流れてくるソーセージの中から、規格より小さいもの、形が悪いものを取り除き、バケツに入れる。工場内は大きな機械音で会話ができず、ベルトコンベアを止めるわけにもいかず、休憩や昼食を交代して取る。

 ビックはこう話した。

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「実習生5人ずつが1つの寮で暮らしています。寮のなかには2段ベッドが4つあります。仕事中は会話ができず、寮に戻ってからはベトナム語で話すばかりで、日本語はまったく上達しません。帰国後も給料の高い日系企業で働きたいから、今は週に一度、ボランティアの日本語教室に通っています」 

九州の物流拠点として機能する佐賀県鳥栖市。Jリーグのサガン鳥栖の本拠地「駅前不動産スタジアム」の背後に商工団地が広がる(著者提供)

技能実習制度とは何なのか

 コロナ下で外国人の入国規制に踏み切った2020年3月以前に、実習生は41万972人(2019年末時点)いた。その5年前の2014年末時点では16万7626人だから、わずか5年で約2.5倍に膨れ上がっていることになる。 

 技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)には、その目的がこう書かれている。 

「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進すること」(第1条)

 わかりやすく言えば、母国では学べない技術や知識を日本で学び、それを母国に戻って生かしてもらおうという「国際貢献」を目的とした制度だ。

 だが、コンビニ惣菜にふたをつける作業や、ソーセージを仕分ける作業から、どんな技術や知識を学び、母国に移転すればいいのか。そもそも、国際研修協力機構の調査(2017年)によれば、実習生を受け入れる企業の50%は従業員数10人未満の零細企業で、19人以下まで含めると65%に上る。日本で国際貢献に対する機運が高まったわけではなく、国際貢献に寄与する余力が零細企業にあるとも思えない。