失踪者が相次ぎ、「奴隷労働」「廃止すべき」と非難された技能実習制度。そうした批判も受けて新制度「特定技能」が設けられたが、この問題はまったく解決していないどころか、実はコロナ禍を経てさらにこじれているという。低賃金で退屈な仕事を外国人たちに押し付ける「人手不足の不都合な真実」とは——。
ここでは、ジャーナリスト・澤田晃宏氏が、ベトナム人実習生をはじめ外国人が働く日本国内の現場を徹底的に取材した渾身のルポ『外国人まかせ 失われた30年と技能実習生』(サイゾー)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目に続く)
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深夜のコンビニ惣菜工場
大晦日の夜も、ベルトコンベアは止まらない。
1つのラインに10人が立つ。空のプラスチック容器が、次々と流れてくる。
最初の2人が、麺を計量し、決まった量を容器に入れる。3人目が、容器に入った麺をならす。4人目が、ナポリタンのソースをかける。その上に、5人目と6人目の2人がカットされたソーセージを入れ、7人目がピーマンを置く。8人目が容器にふたをし、9人目がシールを貼る。10人目が、梱包のレーンに商品を流していく。
完成したナポリタンスパゲティは、大手コンビニエンスストアに出荷される。ラインに立つ10人は、すべてベトナムから来日した技能実習生(以下、実習生と表記する)だ。
ファム・ティ・オアイン(20歳)は、ラインの8番目に立つ。勤務時間は午後8時から、午前7時まで。午前3時から1時間の休憩があり、各自、持参したお弁当を食べる。
「容器から具材がはみ出すこともあり、ふたをする作業が一番大変なんです」
オアインは2019年4月から、佐賀県鳥栖市内の食品製造工場で働いている。同じ会社で、約50人のベトナム出身の実習生が働いているという。
働き始めて約3年。2022年を迎えるその時も、オアインは止まらないベルトコンベアの前に立っていた。母国ベトナムの新年の迎え方をこう話した。
「外に出て爆竹を鳴らしたり、花火をしたり、とても賑やかです。お正月は家族で集まって、おいしい物を食べます。年末年始は休みたくても、実習生は休めません。家族と話ができず、とても寂しいです」