技能実習法では、その基本理念に「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(第3条第2項)と明記しているが、実態はまさに「労働力の需給の調整の手段」そのものだ。建前と本音の甚だしい乖離は、法治国家と名乗る資格を欠く。
この複雑怪奇な制度そのものや実習生の実態については、拙著『ルポ技能実習生』(ちくま新書)をご覧いただきたい。本書はその続編的なもので、主に「出稼ぎ側」の実態にフォ ーカスした前著に対し、本書では「出稼ぎに来てもらう側」、つまり日本国内で働く実習生の現場の実情を描く。
低賃金で退屈な仕事は「外国人まかせ」
深夜のコンビニ惣菜工場が人の目に触れることはないが、日本人の快適な生活は外国人労働者なしには成り立たない。鳥栖市内の食品工場に触れたが、これは日本各地で見られる光景だ。都市部ではコンビニやファストフード店で外国人を見かけることは珍しくないが、圧倒的多数の外国人労働者は我々の目には見えない場所で働いている。
大手メディアや学識者を中心に、耳あたりのいい「外国人との共生」を謳い、技能実習制度を「奴隷労働だ」「廃止すべきだ」といった声が散見されるが、くすぐったい正義感とリアリティの欠如を感じるのは筆者だけだろうか。
確かに、実習生を文字通り奴隷扱いする企業や、実習生の受け入れ企業を監理する立場にありながら傍観する無責任な監理団体はある。論外だ。こうした企業や監理団体を即刻退場させ、受け入れを認めない制度改正が必要だ。
ただ、コンビニに毎朝、新しい商品が陳列されなくとも直ちに困ることはないかもしれないが、日本人の生活の根幹を支える衣・食・住にもすでに外国人が深く関わっている。いったい、彼らの姿がどこまで見えているのだろうか。
廃止するとか、しないとか、そうした次元の話ではない。彼らの姿を可視化し、低賃金で退屈な仕事は「外国人まかせ」にする「人手不足の不都合な真実」をえぐり出すことが、本書の目的である。
外国人を奴隷として使っているのは「あなた自身」であり、筆者もその1人だ。
実習生の大半は農村部の若者
メディアでは劣悪な環境で働く実習生が取り上げられることが多いが、彼らは日本企業に首根っこを掴まれ、連れてこられたわけではない。自ら手を挙げ、日本にやってくる。