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 冒頭のオアインは高校卒業後、実習生として日本に来ることを決意した。すでに日本から帰国した実習生が家を建てたり、日本で貯めたお金を元手にビジネスを始めたりする姿を見て、自分もと思った。Facebook(フェイスブック)などのSNSを通じ、世界の状況はわかる。本当に日本の技能実習制度が奴隷労働なら、誰も日本を目指さない。

「友達もたくさん日本で働いているし、300万円くらい貯金したい」

 寮費を差し引いたオアインの1か月の手取り給与は月に約14万円。生活費は2万円程度に抑え、毎月、最低10万円は貯金している。10万円という額は、農家を営む両親の年収の3分の1程度に相当する。日本と比べれば、まだまだ経済格差がある。

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 夜勤仕事は大変かと思うかもしれないが、むしろ歓迎だ。オアインは働き始めて1年程度だが、すでに働き始めて4年目になるビックの給料を上回る。

 高卒後に日本を目指したオアインとは違い、母国ベトナムの大学を卒業し、会計学の学士号を取得しているビックはこう話す。

「3年間で最低でも200万円くらいは貯金できると思っていましたが、日勤で残業はなく、3年目までは手取りが10万円以下でした。日本に行くために送り出し機関に払った150万円は返済しましたが、貯金は100万円程度しかできていません。私は運が悪かったと思います」

 ビックのように大卒で実習生として日本を目指す若者は珍しい。筆者はベトナムのある送り出し機関に協力を依頼し、実習生の属性を調査したことがある。

 実習生は採用面接に合格後、技能実習計画の認定と在留資格認定証明書が出るまでの約半年間、全寮制の訓練センターで日本語や日本文化を学習する。筆者は2019年6月4日、ベトナムの首都・ハノイにある訓練センターで学ぶ570人の属性を調査した。 

 性別は、男性が341人、女性が229人。年齢は、19~20歳が140人、21~30歳が394人、31~40歳が36人。最終学歴は、高卒が446人、専門学校卒が70人、大学・短大卒が54人だった。出身地までは調べられなかったが、実習生の大半はオアインのような地方農村部出身の「高卒の若者」である。

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 実習生を受け入れる側の目的が「国際貢献」でないことは明らかだが、当の実習生にも「技能実習に専念することにより、技能等の修得等をし、本国への技能等の移転に努めなければならない」(第6条)と、その責務が技能実習法に明記されている。