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翌晩も、その翌晩も同じ夢を見たが、夢は先へと進む。その車に近づくと、窓枠にガムテープが貼られている。中を覗くと、倒したシートに男と女が横たわっている。心中だった。
男性はしばらく黙っていたが、耐え切れなくなり、林業の先輩に打ち明け、夢で見た場所へ2人で向かった。そして車の中で心中した男女を見つけ、警察が出動する大騒ぎになった。亡くなっていたのは東京に住む男女で、男性とは何の関係もなかった。
キツネ憑きの他にも大蛇、山中に響く奇怪な音、そして天狗様……山には何かがいると言い伝えられている。実態ははっきりとはしないが、それらが様々な形で現れ、老若男女を脅かす様子が描かれている。
墨絵を描いた画家の五十嵐晃氏はこう話す。
「私の出身地に近い出羽三山(山形県)も山岳信仰で知られますが、私自身、子供の頃にヘビの祟りなどに遭遇し、不思議なことはあると思ったものです。
現代は、こうした話が薄れつつありますが、山の中には何かがいるということを、墨絵を見て感じてもらえれば嬉しいです」