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50年前のことだが、学校の催し物に集落中の人が集まった時、ある老婆の5歳の孫娘が行方不明になった。村人総出で探したが、なかなか見つからなかった。ようやく見つかった場所は、学校から10キロ以上離れた大菩薩峠のほうだった。5歳の子が、険しい山中を1人で10キロも歩くとは考えられなかったが、見つかった時、女の子は怖がる様子もなく、泣きもしなかった。
「天狗さんに連れていかれた」――皆がそう思ったという。しばらく、その女の子は”大菩薩”と呼ばれていた(「大菩薩女」より)。
木を伐採していたら、自分の方に倒れてきて…
天狗の話は他にもある。
山梨県で林業に従事する男性は、様々な現場で木を伐採してきたが、神様の宿る木が分かる。その木を伐らなければいけない時は、塩と米、酒を供え、手を合わせて神様に無事を祈願する。
ある時、大きな赤松の木を伐ることになった。神様の宿る木であり、祈願して、嫌々ながら伐り始めた。すぐ下に作業道が通り、そちらに木を倒さないように慎重に作業を進めたが、木が倒れ始めると、急に、方向を変えて自分のほうへ向かって来た。他の作業員は逃げたが、男性は木と目が合って凍り付いてしまった。
気が付くと救急車に乗せられていた。あばら骨を8本折る重傷だった。
神様が宿る木は、天狗が休む木でもある。気を付けないと……知人にそう言われたという(「通じなかった祈り」より)。
猟場でもの凄い笑い声が聞こえてきて…
長野県北部の山奥の集落では、猟師たちが様々な不思議な体験をしている。
山中のある場所では、「おーい」「おーい」と、弱々しく、寂しげな声が聞こえてくる。植木の材料を採りに行った2人が滑落して亡くなった場所だという。