がんの場合、大事なのは「QOLを高める支援がどれだけできるか」
岩瀬 亀田先生はいろいろな病院を経験されて、去年の4月から亀田総合病院の糖尿病内分泌内科に勤務しておられますが、診察で一番大事にされていることは何ですか。
亀田 糖尿病は一生つき合っていく病気なので、最先端の治療を行うことももちろん重要なんですけど、それ以上に患者さまの気持ちに寄り添えるかどうか、ということを大事にしています。糖尿病の場合は、薬よりも、ご本人のやる気を引き出して食事・運動のコントロールを行う方がだんぜん効果的なんです。
医学的な実証は難しいのでしょうが、がんに対してもやはり、ポジティブな力の作用というのは、あるような気がします。
岩瀬 それ、わかります! 母のいとこががんになった時、大ファンだったアーティストのコンサートに行ったら、その後の治療がスムーズに進んだのです。「病は気から」って本当だね、とみんなで話したのを覚えています。
医療には、サイエンスの側面がありますよね。そのため、治療法にも必ず「正しい答え」があって、その通りにすれば治ると考える人もいますが、実際には人間の体はそう簡単ではないので、机上論通りにはいかないことも多いですよね。
亀田 どんな病気でもそうですけど、お一人おひとり違うので、医学的には間違っていない治療法が必ずしもその方に合うとは限らないというケースもあります。特にがんの場合は、長くつき合っていくことが多いので、QOLを高める支援がどれだけできるかを考えていくのも大事なんです。
セカンドオピニオンが広がってきた背景
岩瀬 どのケースも違うとなると、医療者側もつねに最新の治療法や知識を勉強しておかないといけませんね。病状について質問した時に、医者に目の前で「それは分からないなあ」と調べ物をされたら、一気に信頼性が揺らぎますが……(笑)。
亀田 確かに……(苦笑)。そうならないように、私たちも常に勉強はしていますが、それだけでは間に合わないこともあります。特に最近は医療が多様化して、知識が追いつかないケースが増えているので、そういう時はきちんと調べた後でお伝えします。
岩瀬 「セカンドオピニオン」が広がってきたのは、そういった背景もあるんでしょうか。ここ最近、新しい治療法や可能性を探る手段として、ようやくセカンドオピニオンが広がり始めたように思いますが、亀田総合病院では、早くから取り組んでこられましたよね。始めた頃と比べて、認知度や意識も随分変わってきたのでは?