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ご存知ですか? 2月1日はみうらじゅんの誕生日、還暦を迎えました

ボブ・ディランは「定職はないのか?」と聞いた

2018/02/01
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 きょう2月1日で、みうらじゅんが還暦を迎えた。折しも川崎市市民ミュージアムでは、少年時代から今日までの軌跡をたどる「MJ's FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」が開催中である(2018年3月25日まで)。

 これまで多くのブームを仕掛けてきたみうらだが、とくにここ10年ほどの彼の仕事の浸透ぶりには目を見張るものがある。2009(平成21)年に東京国立博物館などで開催された「国宝 阿修羅展」に際しては、「阿修羅ファンクラブ」会長に就任した。この展覧会は東京だけで100万人近くを動員し、少年時代から仏像が好きで、さまざまな企画を展開してきたみうらを驚かせる。これと前後して2008年には『広辞苑』第6版(岩波書店)に彼の造語「マイブーム」が収録され、さらに先月刊行された第7版の同項目には《エッセイストみうらじゅんの造語》という一文が付け加えられた。

©山元茂樹/文藝春秋

 とはいえ、「エッセイスト」という肩書きはいまひとつしっくり来ない。それというのも、みうらの表現手段は、イラスト、マンガ、小説、エッセイ、歌、映画、テレビ番組、イベントなど多岐におよぶからだ。本人は肩書きを求められるときには「イラストレーターなど」と名乗っているものの、《今やこの「など」のほうが仕事の割合が大きく、もはや肩書きは「など」だけではないか? と自分でも思うほどです》と書いている(みうらじゅん『「ない仕事」の作り方』文藝春秋)。

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 そもそもみうらの本領は、まだジャンルとして成立していないものに着目し、ひとひねりして新しい名前をつけ、世に広めることにこそある。たとえば「ゆるキャラ」は、一大産業にまで発展したという意味で、もっとも成功したケースだが、元はといえばみうらが全国各地の物産展に赴いたとき、所在なげに立つ妙な着ぐるみを“発見”したのが始まりだ。彼はそんな自分の気になったもの、好きなものを世に流行らせるべく、「一人電通」と称して企画からクリエイティブ、営業まですべてをこなしてきた。表現手段を特化しなかったのも、やりたいことによって、ふさわしいツールを選んだ結果にすぎない。

ラブドールの絵梨花と ©石川啓次/文藝春秋

「定職はないのか?」

 肩書きについてはこんなエピソードも残る。それは中高生のときから心酔してきたボブ・ディランと会ったときのこと。みうらじゅんがどんな仕事をしている人物なのか、通訳がくわしく説明するのを黙って聞いていたディランは、最後に一言「定職はないのか?」と訊ね、みうらを大爆笑させたという(『「ない仕事」の作り方』)。そのディランは一昨年、「偉大なるアメリカの歌の伝統にのっとって、新たな詩の表現を創造したこと」が評価され、ノーベル文学賞を受賞した。みうらもノーベル賞とまではいかなくとも、100年も経てば、エロから仏像まであらゆるものをフィールドワークしながら、日本の伝統や地方文化に新たな光を当てた人物として、教科書などでとりあげられているかもしれない。

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