さすがにびっくりした。

 突如、グレープカンパニーのタレントプロフィールに謎の奇妙なマスクをかぶった人物が登場していた。その名は「人印」と書いて「ピットイン」という。グレープカンパニーはサンドウィッチマンが中心となり設立された芸能事務所で現在は永野やカミナリなどが所属している。そんな中でも異彩を放ちすぎている。程なくして、このピットインが、『MASKMEN』(テレビ東京)の企画で誕生した芸人であることが伝えられる。プロデューサーはあの野性爆弾のくっきーだという。

野性爆弾くっきー

 なるほど。テレ東らしい企画だ。くっきーがめちゃくちゃにプロデュースする様を見せていくのだろうなと思った。どんな破天荒な怪芸人が生まれるのか、そんなドキュメントともコントともいえないようなイビツなものになるんだろうな、と。だが、そんな想像は開始して間もなく裏切られた。後半まで明かされないだろうと思っていた正体が意外に早く明かされる。

ADVERTISEMENT

 なんと、斎藤工(たくみ)だった。

 想像の斜めはるか上。くっきーが主役と見せかけ、主役は斎藤工だったのだ。第2話ではいよいよくっきーによるプロデュースが本格的にスタート。くっきー独特の奇っ怪な節回しで歌う中、斎藤の台詞は「シュコー」だけ。その「シュコー」を様々なパターンで表現していく。くっきーはそれが「能の最終形」だと言うのだ。わけがわからない。

 ところで、今年は野性爆弾くっきーが、お笑い好事家(こうずか)だけのものでなくなっていく年のような気がする。くっきーは、芸人仲間が「天才」と口を揃える男。だが、その独特すぎる世界観ゆえ、一般受けは難しいと言われてきた。フットボールアワー後藤輝基は、そんな彼を「誰よりも速い300km出るエンジン積んでるけど、街中もその300kmでしか走れないバイク」と喩えたという。絶妙だ。けれど、昨年の展示イベントには若い女性が多く詰めかけ、連日満員。いまでは子供向け教育番組にも出演していたりする。いよいよくっきーがお笑いマニアだけではなく、お茶の間にも受け入れられていく気配がするのだ。

 くっきーは、斎藤工扮するピットインに「めちゃめちゃ怖い出で立ちなんで、怖さは出さないほうが良い」「見た目気持ち悪い。それを可愛いと思わすのが大事」とアドバイスを送っていた。まさにくっきーは、その奇っ怪な芸風を「可愛い」と思わすことに成功しつつある。

▼『ドラマ25 MASKMEN』
テレビ東京 金 24:52〜25:23
http://www.tv-tokyo.co.jp/maskmen/