一審判決書には以後の犯行が次々と…
この東村の強盗殺人を1件目として、以後の犯行を1932年10月12日と15日付報知に掲載された一審判決書で見ると、次のようになる。「強盗」は当時の刑法では「持凶器強盗」。「強盗傷害」は当時は「強盗傷人」。
2)1898(明治31)年5月10日 強盗傷害 茨城・阿見村(現阿見町)
3)5月20日 強盗殺人 千葉・市川町(現市川市)
4)5月22日 強盗 東京・小岩村(現江戸川区)
5)6月4日 強盗殺人 千葉・犢橋村(現千葉市)
6)6月15日 強盗 千葉・阿蘇村(現八千代市)
7)6月21日 強盗 千葉・安食町(現栄町)
8) 〃 〃 〃
9) 〃 〃 〃
10)7月15日 強盗 茨城・中家村(現土浦市)
11) 〃 強盗殺人 〃
12)8月20日 強盗 千葉・睦村(現八千代市)
13)8月24日 強盗 茨城・東村(生家近く)
14) 〃 強盗傷害 茨城・栄村(現つくば市)
15)9月20日 強盗 千葉・安食町
16)9月21日 強盗 千葉・笹川村(現東庄町)
17)9月28日 強盗強姦 千葉・椎柴村(現銚子市)
18)10月5日 強盗 千葉・嚶鳴村(現旭市)
19) 〃 強盗 〃
20)10月11日 強盗殺人 茨城・三村(現石岡市)
21)10月12日 強盗強姦 茨城・東村(生家近く)
22)10月24日 強盗 埼玉・大砂土村(現さいたま市)
23)11月12日 強盗 東京・東村山村(現東村山市)
24)11月13日 強盗 東京・立川村(現立川市)
25)11月16日 強盗殺人 東京・神代村(現調布市)
26)12月6日 強盗 千葉・神崎町
27)1899(明治32)年1月24日 強盗 東京・代々幡村(現渋谷区)
28)2月5日 強盗 東京・下練馬村(現練馬区)
29)2月10日 強盗 東京・巣鴨村(現豊島区)
30)2月19日 強盗傷害 埼玉・木崎村(現さいたま市)
31) 〃 強盗傷害 埼玉・浦和町(現さいたま市)=逮捕
あきれるほど“精力的”な連続犯行。「史談裁判第3集」によれば、千葉監獄を出てから約10カ月間に茨城、千葉、埼玉、東京での31件のうち、強盗殺人が7件(強盗傷害でのちに死亡を含む)。さらに控訴審中に出した余罪の「自首状」では強盗殺人2件、強盗20件余りがあるという。
同書は「稀代の凶悪犯人といわねばならない」としつつ、「しかし、彼の犯行とされたものが、全て彼の犯行であったかというと、また一抹の疑問がないわけではない」と述べている。その一例のように、「警視庁史第1(明治編)」が挙げている1899(明治32)年1月23日の東京・深川区(現江東区)の荒物商強盗殺人を「坂本のアリバイが認められて、犯人は別人となった」としている。