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 私の身の周りにも看護師の友達がいて、そういう人って、やっぱり悩んでいるんです。あの人たちは責任感が強いから、自由意志でストライキをしているとは言い難い。だけど、賃金を上げてもらわないと本当に食べていけない、というギリギリのところまで追い詰められてしまった。それでやむなくストライキをする。逆にそういう状況でも、責任感の強さからストライキをしない人もいる。『スピノザ』を読みながら、ストライキと自由意志の問題をすごく考えましたね。

日本人が理解しにくい「公務員がストライキする」ワケ

國分 『スピノザ』で自由意志を論じた部分をそんなふうに読んでもらえると思わなくて、びっくりしています。同時にスピノザも、もしかしたらそういうことを考えていたかもしれないとも思いました。非常に重要な問題がたくさん出てきましたが、素朴なことからいうと、アメリカや日本で言うエッセンシャルワーカーを、イギリスではキーワーカーと呼ぶんですね。これは非常に大きな違いです。

 

 エッセンシャルワーカーという言葉が出てきたときに、そういう考え方は必要かもしれないけれど、この言い方にはちょっと気をつけるべきだという意見がありました。エッセンシャル(必要)なものとエッセンシャルじゃないものという区別ができてしまうからです。もちろんキーワーカーという言い方も、キーであるものとキーでないものという区別を生み出してしまうかもしれない。ただ、コロナで全世界的に同じ問題が同じように語られがちななかで、エッセンシャルワーカーという言い方一つ取っても、実はイギリスでは違った言い方をしていると知るだけでも、少し違う視点を得られる感じがしました。恥ずかしながら僕も知らなかったんですが、いまブレイディさんからうかがって興味深く思いました。

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 ストライキの話は現代の日本の人たちにとってはなかなか実感がつかみにくいかもしれませんね。とりわけヨーロッパでは公務員がストをするのは当たり前なんですね。僕もフランスに留学していたときに「公務員がストライキしないんだったら、誰がストライキするの?」と言われたことがありました。「だって、公務員がストライキするからインパクトがあって意味があるんだろう」って。

 いま、おっしゃっていただいたように看護師のような仕事は命と直結するものだから、自分たちの権利を守るためにストライキをしようと簡単には言えない。でも、本当にギリギリのところで、そうせざるを得なくなったところでストライキという選択がなされている。イギリスがそういう状況になっているという情報は、あまり日本に入っていない気がします。

ブレイディ 入ってないですよ。私が一生懸命書いているぐらいで。