一連の広域強盗事件は渡辺優樹容疑者(38)=窃盗容疑で逮捕=らが「ルフィ」などを名乗ってフィリピンの入管収容所から指示を出していたとみられ、警視庁などが組織の全容解明を急いでいる。なぜ、彼らは収容所からそんなことができたのか。また、フィリピンをはじめ東南アジア諸国の人々はこの事件をどう見ているか。現地の視点と背景をあらためて探った。
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なぜフィリピンの入管収容所に携帯電話を持ち込めたのか
フィリピンの入管収容所はスマートフォンなど携帯電話の所持、使用が事実上認められていた。入管収容所入り口には持ち込み禁止品目が掲げられているが、禁止品目は一眼レフカメラ、ビデオカメラ、ナイフ、短銃、酒類などで電話は含まれていない。
この理由について、フィリピンの邦字紙「日刊まにら新聞」の竹下友章記者は次のように話す。「収容所に入る人の大半は、ビザが切れても滞在していたり、観光ビザで働いていたりした外国人。凶悪犯などではなく、入管法違反者に過ぎないゆえに入管は人道上の配慮から故国の家族らとの連絡用に携帯電話の所持は認めてきた。また、強制退去の際の罰金や航空券代を自力で工面させるためにも電話を使わせてきた」
これはフィリピンに限らない。日本の入管も公衆電話のような電話を収容所内に設置し、外国人収容者に航空券手配や故国の家族との連絡用に使わせている。
ただ、フィリピン入管が今回の「ルフィ」たちに電話使用を認めたのは明らかに適切ではなかった。彼らはフィリピンでは簡単に入手できる「飛ばし携帯」と呼ばれる未登録の電話を使って犯罪を重ねてきた国際手配の刑法犯で、単なる入管法違反者ではなかったからだ。「ルフィ」たちに限っては入管職員が厳重に収容所内での行動を監視し、特に電話使用に関しては連絡先や時間を制限していれば、彼らがさらなる犯罪の指示を出すには至らなかったはずだ。
入管や警察に日本人が拘束された際、邦人保護の観点から接見する義務がある在フィリピン日本大使館もすばやい対応をすべきだった。「電話使用の自由」を大使館員は知っていたはずで、フィリピン当局と特別な交渉をしてでも、彼らの電話使用だけは制限すべきだったのではないか。