文春オンライン

「虐待された過去があっても、親と縁を切ると悪者にされる」“20代で母親と絶縁”した遠野なぎこ(43)が世間の風潮に思うこと

遠野なぎこさんインタビュー #3

2023/03/06
note

遠野 私はどうしても嘘をつけない人間なんです。だから、自分の言葉できちんと話をしておきたかった。そんなときにたまたま取材のお話をいただいたので、タイミング的にも、ここで区切りをつけておきたかったんです。

目に見えない傷も必ず癒えるから、自死だけは選ばないでほしい

――お母様が亡くなってから弟さんや妹さんとのご関係はどうですか?

遠野 一度弟と連絡を取って私の体調が悪くなってしまって以来、連絡は取っていません。弟や妹たちと連絡を取ると母のことを思い出してしまうから。次に強い揺り戻しがあると、私はもうどうなってしまうかわからないから、そうするしかないんです。

ADVERTISEMENT

 きょうだいのことは本当に愛しているけど、今は距離を置いておきたい。もしも何かがあったら絶対に助けたいと思うけれど、会ってしまうと私が壊れてしまうから、今はちょっと難しいかなというのが正直なところです。

 

――虐待を受けた過去があって、今も苦しんでいらっしゃる方は多いと思うんです。大人になって突然傷が癒えるようなものではありませんし。そういう方に向けて、遠野さんから何かメッセージをいただけませんか。

遠野 誰しも「今のままずっと苦しみが続く」ということはないと思うんです。きっと何か、解放されるきっかけがあるはず。体の傷だって、治癒していくじゃないですか。ずっと傷口がグチュグチュしているということはないと思います。「目に見えない傷だって必ず癒えていく」ことを信じてほしいです。

 それこそ、自死だけは選ばないでほしい。特にこの2、3年、自死された方はかなり多かったと思います。でも必ず変化は訪れるから、生きてほしい。私が言えたことではないですし、私もいまだに「死んじゃえばいいや」と思うときだってありますけど。

 だからこそ、色々な人の経験談を読んでいただくのもそうだし、色々な人の生き方を見たりすることも大事なことだと思います。

――「ずっとこのまま、この苦しみが続いちゃうんじゃないか」「先が見えなくて苦しい」と感じてしまう人は多いかもしれません。でも、視野を広げてみるというか、知っていれば楽になることもありますものね。

遠野 そうですね。別に自分より境遇がひどい人がいるだとか、そういう安心の仕方をしてほしいわけじゃないんです。いろんな生き方を見て、自分の人生経験と照らし合わせて見たりすると、何か自分を助けてくれるヒントになることもありますから。

関連記事