そしてバイデン氏は「1年前のあの暗い夜、世界は文字通りキーウの陥落に備えていた。 1年というよりずっと昔のことのように思えるが、その年を思い返してほしい。1年後、キーウは持ちこたえ、ウクライナは持ちこたえた。 民主主義は立ち上がっている。アメリカはあなたたちとともに立ち、世界はあなたたちとともに立ち上がっているのです」と強調した。
会談では5億ドルの追加の軍事支援を行うことをバイデン氏が表明し、ロシアを支援する企業などに対しての、新たな制裁を近く発表することも明らかにされた。
共和党からは批判の声も…世論の変化は
バイデン氏はゼレンスキー氏と、防空警報が鳴り響く中で大聖堂などを見学し、午後1時10分(日本時間午後8時10分)にキーウを後にした。滞在は約5時間ほどだった。
今回の電撃訪問は数カ月前から極秘に計画され、バイデン氏の決断は直前だったとされる。訪問はアメリカ議会の構成などが変化し野党・共和党などが力を強める中で、ウクライナへの支援の継続と結束を図る狙いもあると見られている。
一方でこの訪問について、共和党の一部は即座に反発した。グリーン下院議員はバイデン大統領のSNSの投稿を引用し「私たちは、NATOの同盟国でもない外国の戦争に資金を提供するために税金を払うことはない。外国の国境や外国の『民主主義』のために犠牲となる息子や娘を送り込んだりはしない」とバイデン氏のウクライナ訪問を厳しく批判した。
ゲイツ下院議員は「ウクライナへの援助はもういらない」と述べたほか、ビッグス下院議員も「自国に緊急課題を抱えているのだから、もう白紙委任はしない」と、改めてウクライナ支援の見直しにも言及している。
AP通信が15日に発表した世論調査によると、バイデン大統領の対露政策については、民主党支持者の69%が賛成する一方で、共和党は80%が不支持となり、全体でも過半数(54%)が反対となった。ウクライナへ武器を提供することについては、48%が賛成し、29%が反対と、賛成が上回ったものの、2022年5月には賛成が60%あった状態から12ポイントも下落した。アメリカメディアの報道でも、すでにバイデン政権が「支援の見直しに迫られる」と見通していることも伝えられている。
「支援疲れ」とも言われる状況が続く中で、バイデン氏の電撃訪問がアメリカ世論と議会も動かす乾坤一擲となるのか、今後が注目される。
(FNNワシントン支局 中西孝介)