精神科病院の保護室という密室で、目を覆いたくなるような事件が起こっていた。

 無抵抗の患者に白衣の男が近づいて蹴りを1発、続けてもう1発。壁際に追い詰めてさらに顔に1発――監視カメラが捉えたのは、男性看護師による患者への暴行の瞬間だ。看護師の表情はうかがえないが、暴力を振るわれた患者のおびえきった表情が痛ましい。

病院の謝罪会見では報道陣から事件の隠蔽を疑う声も

 この監視カメラ映像は、静岡県沼津市にある「ふれあい沼津ホスピタル」で昨年9月に撮影されたものだ。問題の動画が病院の外部へと流出したのは昨年末。不祥事の発覚を受けた病院は、謝罪会見を開き、現在は県警による捜査や関係機関の調査が継続している状況だ。大手紙事件担当記者が言う。

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患者への暴行がったふれあい沼津ホスピタル

「流出したのは、50代の准看護師Xによる40代の男性患者に対する2件の暴行動画でした。職員による患者への虐待はXのものだけではなく、40代の看護師Yが70代の男性患者を車椅子ごと転倒させてケガを負わせていた事実も、病院の会見で明らかになっています。本人たちは病院の聞き取りに対し、『食事を床に落として食べることが続き、暴行してしまった』(X)『患者が他の患者に危険な行為をしたのを止めるため』(Y)にやむなく手をあげてしまったと説明。両職員は10月末に自主退職したとのことです」

 監視カメラの記録によると、患者への暴行があったのは9月。問題が公になったのはそれから約3カ月後の12月だった。この間に匿名の通報が行政に寄せられており、一部報道機関の取材も始まっていた。当事者である病院の対応は後手に回った。

2022年9月15日の暴行動画。Xが患者の顔を殴っている

「会見では報道陣から事件の隠蔽を疑う声も上がりました。病院の代理人弁護士は『事実関係の把握と職員の処分に時間がかかった』と説明し、病院の職員も『認識が甘かった』と謝罪しましたが、暴行を行った看護師らへの処分は10月にさっさと終えているので、納得した記者はいなかったのではないでしょうか。事件についての詳細を話すことにも消極的でしたし、不信感の残る会見でした」(民放事件担当記者)