餃子と異星人が、これほど相性がいいとはね。NHKの夜ドラが絶好調だ。
餃子店でバイトする田中ヒロシ(豆原一成)は無駄口を叩かずに餃子を作り、周囲とも適度な距離をとって、安アパートへ帰るだけの地味な青年だ。
しかしヒロシの内部には母星を離れて地球に漂着した六千万のスカベリア人が暮す。ヒロシは地球人に擬態したヒト型要塞で、中には極小化した民が棲み、姫(ファーストサマーウイカ)の下、大統領ハジメ・カイセル(吹越満)が政府を率い、艦長のトオル・マキシム(斎藤工)が操縦席から天才的な技術でヒロシの行動を制御する。
図書館に調べ物に行ったヒロシが女子大生の雅しずか(山之内すず)と接触し本棚が倒れる事件が発生。
日常世界では、恋に恋する女子大生、しずかは、この遭遇を“運命の出会い”と感じる。ある日「餃子の女豹」スタッフが、昼番夜番を交え飲み会を開く。
目立たぬように艦長の指示に従いヒロシがたまたま座った隣に、しずかがいた。しずかはヒロシを運命の人と確信する。
この事態に要塞内はパニックだ。二人が親しくなってキスでもしたら、地球のウイルスや細菌が侵入するやもしれぬ。そんな恋愛モードは絶対回避だ、と。
ところがヒロシに夢中のしずかは、思わず彼の唇を奪う。宇宙船のブリッジは激しく揺れて大衝撃が走る。この一件でトオルは艦長職を解かれ、彼は後任に副艦長のアケミ・バルドー(高山一実)を推す。
保守的な政治家は、あの女は敵だ、別れろと主張する。しかし、しずかが「餃子の女豹」のオーナーの娘と判明し、大統領は現実路線を選択した。しずかの心を傷つければ、バイト代を下げられ家賃も払えない。全スカベリア人の生活が危うくなるのだ。
なにしろ燃料も不足しているから操縦室の艦員は人力自転車を漕いで、ヒロシを動かしているほどだ。
ヒロシが餃子を上手く作れるかに、スカベリア人の生命はかかっている。
人間世界の日常と、超ミクロの異星人の生活が、交互に並行して描かれていく対比の妙に、SFの核であるセンス・オブ・ワンダーを感じた。それにしても、斎藤工は宇宙人を演じるとなぜあれほど似合うのか。
斎藤工は少年時代、シュタイナー学園に通っていたため、テレビを観ることを禁じられていた。シュタイナーといえば神智学を代表する神秘思想家だ。そんな背景が斎藤を宇宙人に似せたのかもしれない。恋愛ドラマより宇宙人。そんな斎藤を、時どき見たい。
次の合コンに、歯ブラシなどお泊りセット持参で臨むしずかの攻撃を、新米艦長のアケミはかわせるか。月~木の夜、私の中のスカベリア星人が歓喜する。
INFORMATION
『超人間要塞ヒロシ戦記』
NHK総合 月~木 22:45~
https://www.nhk.jp/p/ts/12MNX7Q756/