『新しい波8』や『はねるのトびら』でブレイクした北陽の虻川美穂子さんは、2010年にシェフの桝谷周一郎さんと結婚、40歳で出産。子育てと芸人を両立する中で感じた「社会との断絶」やキャリアへの悩みを赤裸々に明かしてくれた。(全2回の1回目/続きを読む)

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40歳で出産、小学3年生になった息子

――2010年にシェフの桝谷周一郎さんと結婚し、40歳のときに出産をされました。お子さんはまもなく小学3年生なんですよね。共働き育児はいかがですか。

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虻川美穂子さん(以降、虻川) 今ちょうど学童に行ってる時間ですね。このあとお迎えに行きますけど、寝かしつけまで基本ワンオペです。平日の夜は夫がお店に出ていていないので。

――それは大変ですね。子育てで桝谷さんと衝突したことは?

虻川 保育園に預けていなかった3歳くらいまでは「なんで私ばっかり……」と思ってましたし、嫌味もしょっちゅう言ってました。でも責めすぎたのか、その時期の夫の顔色は良くなかったです。

北陽の虻川美穂子さん

――周りに頼れる人がいないとつらいですね。

虻川 子育てってなんでこんなに苦しいんだろうって思っていました。

 頭にきた話があって、産後に近所で買い物してたら、いきなりおじさんに「久しぶり」って声をかけられたんです。知ってる人だったかなと思って挨拶を返したら、「最近全然テレビで見かけないけど、何してんの?」と言われて。

「一生懸命子育てしているんだよ!」と思いつつ、世間的には、子育て中でテレビに出てない自分は存在しないことになってるのかとショックを受けました。子育てによって「表舞台」から消されてしまった、みたいな。

――働きながら子育てしている方の多くが経験していそうな悩みです。

虻川 産後からずっと、頭からもやしが生えそうなぐらい毎日200%の力を使って生きてるのに、社会的には無き者にされてしまう。空洞に入り込んでいるそのままの状態を認めてほしいのにと、つい最近まで悩みの中にいましたね。

 そうそう、電動ママチャリをどれにしようかって悩んでた時にふと、「芸人の皆は今頃めちゃくちゃ頑張ってネタを考えてるのに、自分は自転車の機種に悩んでる。こんなに差がついたらもう絶対に追いつけない」と感じて、自転車屋さんで涙が溢れてきたこともあります。

 あと、キャパシティオーバーで耳が聞こえなくなったこともありました。

――え、そんなことがあったんですか。