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給料を取り上げ、骨折するまで暴行、火傷で広範囲に皮膚が剥がれ…衰弱死した25歳男性への“あまりにも酷すぎる仕打ち”

滋賀県「同居男性衰弱死」事件 裁判ルポ #4

2023/03/17

genre : ニュース, 社会

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なぜ愛していた相手が低栄養状態になるのか

検察官「誰かが達也さんに食べ物を与えたりすると嫉妬すると言っていましたが、それはどういうこと?」

被告人「ヤキモチみたいな……」

検察官「達也さんのことを愛していたんですよね。結婚まで考えていた。それがなぜ、低栄養状態になる?」

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被告人「……」

検察官「2019年4月9日に達也さんからあなたに送られたLINEには、《分かった、本当にごめんね。2度とお菓子取らん。ママに言う》とありますが、意味内容を説明してもらえますか?」

被告人「どういうことか、ちょっと分からない」

解剖医の所見を能面のような顔で聞いていた

 岡田さんの遺体を解剖した法医学の専門家によると、岡田さんの左手には火傷の痕があり、かなり広範囲に皮膚が剥がれてしまっている状態だったという。しかも腕が曲がらない状態だった。「沸騰した温度に近いものがかかった可能性がある。相当痛かったはずだ」と見解を述べた。

 また、岡田さんの右足のスネは楕円形に皮膚が剥がれており、骨が見えている状態で、骨折していたという。古い傷と新しい傷が混在しており、開いた傷が治癒されることなく、放置されていた。少なくとも1カ月以上前から暴力を受けており、「岡田さんの痛みは非常に強いものだったと考えられる」と述べた。

大津地検へ送検される小林久美子被告 ©共同通信社

 また、死因に直結することだが、岡田さんは腹膜炎を起こしており、十二指腸が破れていた。「潰瘍だけでも相当痛いが、粘膜を破って穴が開く状態になれば、必ず緊急手術を受けなければならない。これを十二指腸穿孔と言いますが、放っておいたらまず亡くなる」と述べた。

 つまり、岡田さんは激しい低栄養状態から、臓器に栄養が行き渡らなくなり、傷を治すためには栄養が必要なのに、それがないために免疫力がどんどん低下していった。岡田さんの解剖所見には「加害行為を受けないと損傷されない傷ばかりで、日常的に暴行を受けていたと考えられる。暴行と食事を摂取できていないことの2点に行き着く」と書かれていた。

 それでも小林被告は解剖医の所見を能面のような顔で聞いていただけだった。