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連載尾木のママで

『ぼくの名前はズッキーニ』を観て、日本の里親制度を憂う

尾木のママで

2018/02/08
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イラスト 中村紋子

 今週土曜日(二月十日)に封切られる映画『ぼくの名前はズッキーニ』。スイス・フランス合作のクレイアニメで、孤児院で暮らす子供達の日常をイキイキと描いている。大人にこそ観てほしい作品よ。

 主人公は“ズッキーニ”ことイカールくん。孤児になり、ある施設に入った彼を待ち構える子供達は皆、苛酷な現実に直面している。父親が刑務所にいたり、母親が精神疾患だったり。この映画を観て痛感したのは、どんな親であっても、子供は親が大好きで、親に愛されたいと願っているんだってこと。親からの手紙を待ち続ける子、車の音が聞こえると、ママが迎えに来たと思って飛び出してくる子……。あまり詳しい説明はないけれど、彼らがふと見せる表情が、全てを物語っているの。

 印象的なのは、施設の先生や警察官など、子供達の寂しさを理解し、温かく見守る大人たちの姿。血のつながりはなくても、自分を大切に思ってくれる大人の存在が、子供には必要なのよね。

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 日本ではあまり身近でない印象の里親。実親による養育が困難な子の「里親等委託率」は一八・三%(二〇一六年度)。欧米諸国で五~九割なのと比較すると底抜けに低い。日本では施設入所が八割超と圧倒的多数なの。

 厚生労働省は昨夏、家庭的な環境での養育が望ましいとし、里親委託率を就学前で七五%達成などの数値目標を出したけど、各方面から「非現実的」と反発が起きている。児童相談所は急増する児童虐待に関わる業務に忙殺され、支援体制が不十分な里親委託にまでは手が回らない。里親委託に同意しない実親が多いこと、マッチングや委託後のサポート体制の不備も里親委託が進まない背景にある。

 保護が必要な子供は全国で四万五千人超、里親登録数は約一万世帯。支援整備を進めるためにも、もっと里親への認知が広がってほしいわ。

INFORMATION

「ぼくの名前はズッキーニ」(スイス・フランス)
2月10日(土)より、新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開
監督:クロード・バラス
boku-zucchini.jp/

『ぼくの名前はズッキーニ』を観て、日本の里親制度を憂う

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