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「短期決戦」でも力負けしない“パワー”を身につけた日本の野球

 多村氏は、日本の戦い方が以前とは異なってきているという。日本の野球といえばバントといった小技、繋ぐバッティングや機動力を活用した“スモールベースボール”が代名詞だが、今大会は本塁打など長打が目立つ試合が多かった。

「もちろん選んだ四球の多さなどスモールベースボールの良さを生かしつつなのですが、アメリカ戦で互いに2本のホームランが出てわかるように、短期決戦は長打が出ないとなかなか勝てないんです。

 大谷選手をはじめ村上選手、岡本選手、そして吉田正尚選手など、メジャー相手にもパワーや飛距離で負けることなく対抗できることを証明しましたし、また150キロ以上のスピードボールを投げるピッチャーも多く、力と力の勝負もできるようになったのは大きいと思いますね」

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“スモール”と“パワー”のダブルスタンダードが、王座奪還に繋がったというわけだ。

「2023年の大谷&ダルビッシュ」と「2006年のイチロー」

 そんな侍ジャパンの中心にいたのが、大谷とダルビッシュのメジャーリーガーのふたりだ。その存在感は群を抜いていた。

圧倒的な存在感でチームの中心にいたダルビッシュ ©佐貫直哉/文藝春秋

「ダルビッシュ選手は宮崎の強化合宿から参加しチームの一体感を高めてくれましたし、また大谷選手もチームメイトと積極的にコミュニケーションを取り、結束を強めファミリーのようなチームになっていきました。やっぱり日本の最大の武器は“チームワーク”なんですよ」

 多村氏は、自身が参加した2006年の第1回大会のときのことを振り返る。

「僕らの時代、彼らふたりのような役割をしてくれたのがイチローさんだったんです。

2006年WBCで優勝し、宮本慎也(中央)と肩を組んで喜び合うイチロー(左) ©時事通信社

 当時メジャーで活躍していたイチローさんも初めての国際大会だったんですけど、試合に挑む姿勢や声掛けなど、中心となってチームを盛り上げてくれました。それを宮本慎也さんや谷繫元信さんといったベテランの方々がサポートする感じで、いいチームワークを築き上げることができたんです。伝統じゃないですけど、そういったものは現在にも引き継がれているかなと感じますね」

「憧れを持つな」と語った大谷と“ドリームチーム”

 世界の野球を知る者の存在。大谷は決勝に挑む前、チームメイトのトラウトやベッツ、ゴールドシュミットなどのビッグネームに「憧れを持つな」と、アドバイスを送っていた。大谷だからこそ発することのできる説得力のある言葉。まさに精神的支柱であり、一緒に戦う仲間からすればこれほど心強いものはないだろう。

 ただ選手たちの気質は、17年前とはずいぶん変わったように多村氏は感じるという。