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読売新聞社長・山口寿一の問題意識

──読売がイニシアティブをとっているのかとばかり思っていたので意外です。

下山 それがこの文庫版の読みどころでもあります。読売新聞が座長をつとめる第二分科会のテーマは「健全な言論空間・世論形成」でしたが、それは実はそのまま読売新聞グループ本社代表取締役社長の山口寿一の問題意識なのです。

 今、読売新聞をとっている人は、くりかえし「アテンション・エコノミー」という言葉が出てきていることに気がついている人もいるでしょう。この「アテンション・エコノミー」とは、ネット空間で、人々の注目を奪い合う競争がおきている結果、本来評価されるべき言論機関のニュースがないがしろにされている、という考えです。

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山口寿一・読売新聞グループ本社社長 ©時事通信社

 これはさきほどのネオ・ブランダイス学派のコロンビア大学教授ティム・ウーが唱えているもので、合衆国憲法ができたときは、紙のメディアしかなく、つまり言論は有限だった。だから心配すべきは、政府からの抑圧だったので、それに対抗する合衆国憲法修正第一条ができたのだけれど、インターネットがある現在、有限なのは人々の関心のほうで、言論はそれこそ無限にある。だからその人々の関心の争奪戦こそが今日の問題の核心で、それゆえにプラットフォーマーを規制する必要があるという考えです。

 山口寿一は、その考えを知り、この問題に対して意外な人物と共同戦線をはることでとりくもうとしているのです。

単行本の出版後に起こった大きな変化

──誰でしょう?

下山 単行本でもう一人の主役だった慶應SFCの天才エンジニア村井純です。村井は、SFCを2020年3月に退任していますが、「国境なき記者団」というパリに本部があるジャーナリストの集団にあるプロジェクトを依頼されます。それは、このインターネット上で、「もういちど正当な言論機関が評価される」ようなシステムをつくる、というものです。

 このことを知った山口が、村井に連絡をとり、このプロジェクトに山口と読売はのめりこんでいくようになるのです。それが単行本の出版後に起こった大きな変化でした。