1ページ目から読む
4/4ページ目

──単行本ではその山口氏に二度話を聞けているということで話題になりましたが、今回も山口氏は取材に答えているのでしょうか?

下山 はい。今は日本テレビホールディングスの代表取締役も兼ねるようになったので超多忙ということで、書面でのやりとりになりました。しかし、今回もきわめて誠実にしかも詳細に答えています。

 たとえば読売は、現在も紙を主軸におく経営を崩していませんが、それについて変える気はないのかという問いに対してははっきりと現在の「新聞WITHデジタル」の政策を続けることを明言しています。実は山口氏がどう考えているのかを、今回の取材で、他社の記者もしきりに知りたがっていることがわかり驚きました。他社からも山口寿一は、新聞守護の最後のイデオローグと考えられているのです。

ADVERTISEMENT

村井純・慶應義塾大学教授 『2050年のメディア』より 2019年4月撮影

本当に持続可能なメディアとは何か

──そう聞いていると山口氏を礼賛しているようにも思えますが。

下山 山口氏はそれこそ法務部の部長だった20年以上前から、「ライントピックス」訴訟を戦うなど、ネットのことは熟知しています。私も、「アテンション・エコノミー」などの説明を聞いていると、そうなのかな、と思ったりしてしまうこともありました。が、しかし、この書き下ろし新章のなかで「レッドピルを飲む」という表現をつかって、ヤフーや山口氏との考えとも違うもういちど鳥瞰する視点で、「本当に持続可能なメディアとは何か」ということを考えています。

 今回の件で、ヤフーがニュースメディアに払う料率は若干はあがるでしょう。しかし、この料率がかりに倍になったところで、現在の新聞の雪崩を起こすように下がり続ける売上の消滅には、焼け石に水ほどの効果しかありません。

 文庫版の書き下ろしでは、ではどうすればよいのかということも考察しているのです。