「のけぞる格好になったとき、たまたまドアノブに手が届き、ドアを開けて外に出ることができました。『助けて!』と、私は大きな声で叫びました。近所の家にも行き、インターホンで『強盗……』ということしかできず、その場に座り込んでしまいました。
その家の奥さんが出てきてくれました。近所の人が私の叫び声を聞いていて、逃げてゆく男を捕まえてくれました。近所の人は、男を泥棒だと思っていたので、取り囲んだあと、『何を盗ったんだ!』と詰め寄っていました」
殺害を依頼した知人を完全に恨むことができない
やっとの思いでミナコさんは命拾いをした。しかし、その後の捜査によって、依頼をしていたのが知人だったことがわかる。事件の数年後、ミナコさんはこう語っていた。
「警察から『誰かに殺されかけるようなことは心当たりありますか?』と聞かれたんです。私は『ありません』と答えました。すると、警察は『あなたは殺されかけたんです。犯人が実行犯とインターネットでやりとりをして、あなたを殺そうとしたんです』と言っていたのですが、私には意味が分かりませんでした」
また、このとき、警察が机の上に紙を置いたのを見た。ただ、「見たらだめですよ」とも言われた。
「『見たらダメですよ』って部屋を出て行きました。私はその紙を見ていません。たぶん、知人が犯人に送った依頼文だったのではないかと思っています。私が悪いやつだから殺してほしい、と書いてあったんじゃないかと想像しています。今思うのは、あのときそのメッセージを読んでいれば、知人を恨むことができたのかもしれません。ただ、関係がよかった知人なので、完全に恨むこともできないでいます」
ツイッターの「闇バイト」で提示された条件
こうした経験から、「闇サイト」や「闇バイト」という言葉を聞くと、ミナコさんの心の中に恐怖がよみがえる。
政府が発表した「プランの概要」は、「実行犯を生まない」ための対策として、(1)「闇バイト」等情報に関する情報収集、削除、取締り等の推進、(2)サイバー空間からの違法・有害な労働募集の排除、(3)青少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させない教育・啓発――などとしている。
こうしたバイトの文言としては「高額バイト」「即日即金」などと書かれている。