「ガシャポン」「ガチャ」など呼び方は様々だが、馴染みのある「ガチャガチャ」や「ガチャポン」、近年は「〇〇ガチャ」の呼び名が定着し、市場規模は400億円以上ともいわれるほど成長している。
以前は子供向けの玩具がメインだったが、第4次ブームといわれる現在はいわゆる「大人ガチャ」が盛り上がっており、普通の大人も気軽に楽しめるようになっている。そんな大人ガチャの魅力を紹介しよう。
様々な場所に浸透するガチャ
「ガチャガチャの魅力は、まず何が出るか分からないワクワク感ですよね。最近はそれに加えて工夫を凝らしたユニークな商品が次々と生まれていて、大人でも楽しめる商品が作られるようになっています。商品としてのクオリティも高くて、中にはこれでちゃんと商売になっているのか心配になるほど凝った作りのものも少なくありません」
こう話すのは20年以上にわたってガチャガチャの世界を見続けてきたガチャガチャ評論家おまつこと尾松洋明氏。現在の「大人ガチャ」のブームはコロナ禍の影響で始まったものが今も続いているとのことだが、今回のブームの特徴としては、「ガチャガチャが一般に浸透したため、これまで考えられなかったような場所にもガチャガチャが設置されるようになった」ことが大きいという。
「2020年頃からは日常の風景として、これまでなかったような場所でもガチャガチャが目につくようになっていて、大人も普通に回せるような環境ができています。たとえば関東圏の駅の構内には普通にガチャガチャが置かれるようになっています。
他にも切符販売のDX化を進めているJRでは、営業終了したみどりの窓口の跡地を使って、無人カプセルトイ専門店の営業を始めるケースも出ています。昨年末にはJR西日本がJR千里丘駅とJR岸辺駅構内に設置しています」
「自社製品をガチャに」「自治体とのコラボ」も
ガチャガチャを使った様々な企画も増加中だ。たとえば自社製品をモデルにガチャ商品を作れば、多くの人に認知してもらうチャンスにもなるため企業が宣伝広告媒体として注目するケースも少なくない。
「最近では、30周年を迎えたJリーグのチームユニフォームなどをモチーフにしたぬいぐるみグッズと日本代表『SAMURAI BLUE』のぬいぐるみが話題になりました。これは元日本代表の伊野波雅彦さんがガチャガチャメーカーのクオリアさんと組んで作った商品で、鹿島アントラーズや川崎フロンターレのぬいぐるみは即完売したそうです」
他に目立つのが各自治体とのコラボ。自治体がご当地の名物や建物をモチーフに商品化したものが、その土地でしか手に入らないお土産として話題になっており、街おこしにも一役買っている。
「この3月には開業138年を迎えたJR大宮駅をモチーフにしたガチャガチャが限定1万個で販売されています。関東近県では他にも浦和ガチャ、船橋ガチャなども作られていますね。『街ガチャ』と呼ばれることもあります。本物の九谷焼や博多人形は高価ですが、若者に手軽に手に取ってもらえるようにという思いで制作しているそうです」
佐賀県の唐津工業高の生徒たちがガチャガチャを使ったプロジェクトに取り組んだり、名古屋港水族館がエンペラーペンギンから抜け落ちる直前に回収した羽根を使った「幸せの黄色い落ちない羽根」を受験生向けに発売して話題になったこともある。
ガチャガチャのカプセル自体も進化しており、世界的なSDGsの流れを汲んでプラスチックのリサイクルだけでなく、段ボールでできたカプセルや、でんぷんやパルプを材料にしたカプセルも登場している。
「バンダイがガシャポン45周年プロジェクトの一環として、バイオマス素材を使ったカプセルを作りましたし、ケーツーステーションが出したプラスチックを一切使用しない『環境に優しい紙のカプセルecoポン』も話題を集めました」
マスク着用が緩和されるなどコロナの影響は着実に薄れているが、盛り上がったガチャブームの熱はまだまだ冷めないようだ。