“トウカイテイオーの復活”から“サイレンススズカの悲劇”まで…競馬が駆け抜けた90年代
オグリキャップの後にも、競馬にはスターホースが次々と登場し、人気は続きます。
皇帝・シンボリルドルフの子・トウカイテイオーが、ケガに悩まされながらも奇跡の復活を果たした93年。ナリタブライアンが圧倒的な強さで皐月賞、日本ダービー、菊花賞のいずれも圧勝して三冠馬になった94年。牡馬に比べて弱いといわれる牝馬ながら、有力な牡馬をねじ伏せてエアグルーヴが天皇賞・秋を勝利した97年。最初からトップに立ってそのまま押し切る「大逃げ」という派手な戦術でファンを沸かせたサイレンススズカの大活躍と、その最大のレースで悲劇がおきた98年……。
90年代を通じて競馬は一大ジャンルとしてファンを獲得し続け、エアグルーヴが年度代表馬に輝いた1997年には、JRAの総売り上げは4兆円を突破して過去最高を記録します。
一方で、この年をピークに、以降は売り上げを落としていきます。競馬の苦戦とともに、競馬ゲームも苦戦し、シリーズものも発売されなくなっていきました。
その中でジャンルを代表する作品としてファンに支えられ続けたのが、「ウイニングポスト」シリーズだったのです。
なぜ「ウイニングポスト」は“ブーム以降”もファンの心を掴んだのか?
競馬ゲームは、他のゲームとは異なる特徴がありました。
通常、ゲームでは、キャラなどの能力は数字の高低で表現します。ところが、多くの競馬ゲームは、競走馬の能力が詳細に表示されない、いわば「手探り」の状態。父や母の成績がパッとしなくても、突然強い馬が生まれたり、年齢を重ねると急成長してその世代の最強馬になることもあるのです。
こうした“予想しづらさ”は、現実の競馬でも起こりうることを、ゲーム内で再現したとも言えます。ただ、それは同時に、やりごたえがあるともいえますが、お手軽……とはいいがたい面がありました。
その中で「ウイニングポスト」シリーズでは、プレーヤーは馬主。馬そのものだけでなく、調教師や騎手、馬産地の人々とのかかわりを描くことで、競馬界の雰囲気も再現し、難しいことをせずとも、競馬のだいご味が楽しめる立て付けをとりました。現実にはなかなかなれない馬主が体験できる上に、かつての名馬の馬主になったり、多彩な海外レースに参戦できる「競馬のロマン」を表現したのです。