最新のトレンドにのった詳しいゲームを作れば面白いものになる…というわけではない
――実際の競馬をゲームで再現するのに、苦労するポイントはどこでしょうか?
斎藤:現実の競馬と、ゲームとしての面白さのバランスをいかにして取るかです。
例えば最近の競馬では、外厩(馬が普段いる厩舎でない、トレーニングセンター以外の外部の調教施設のこと)でも競走馬を調教(訓練)するようになっていて、以前のように調教師だけが調教するわけではありません。
それをゲームにそのまま反映させると、プレイヤーは外厩を建設して競走馬を一頭ごとに細かく調教したくなるわけですが、「ウイニングポスト」のような馬主の視点では、一頭ごとに細かく調教する手法がそのままゲームに合うとは限りません。
――馬主と調教師では視点が違いますもんね。
斎藤 競馬のトレンドは追求したくなるのですが、それでゲームが面白くなるかは別です。
開発陣にはかなりの競馬好きが集まっているので、実際の競馬事情には精通していて、トレンドを盛り込んだアイデア自体はどんどん挙がってきます。しかし、チームでミーティングをすると「それはゲームとして遊んで面白い?」と考えてしまう。これは、本当に難しい問題なんです。
「競馬のだいご味の一つは、競走馬の血統が後世につながり、競馬ファンの人生とともに歩んでいけること」
――これまで多くの競馬ゲームはあったものの、続きません。にもかかわらず「ウイニングポスト」シリーズは、なぜ30年続いているのでしょうか。
斎藤 ゲームに登場する競走馬の血統が継承されていくシステムが、ファンの支持を得ているからでしょう。
他のゲームでも、プレイヤーの競走馬の血統はつながるものの、ライバルは固定のままなんです。「ウイニングポスト」の世界は、ライバルも次の世代に血統を継承していきます。例えばプレイヤーが育てた競走馬の子や孫が、プレイヤーのライバル競走馬として立ちはだかることだってあるのです。
――「ウイニングポスト」は、現実の競馬をゲーム内で再現していますが、未来の世界では名馬の血を受け継いだ仮想のスーパーホースも登場しますね。
斎藤 競馬のだいご味の一つに、競走馬の血統が後世につながることで、競馬ファンが人生とともに歩んでいけるところにあります。学生のときにファンになった競走馬がいて、自分が社会人になるとその子、孫たちがレースを走るわけです。そういった魅力を「ウイニングポスト」でも表現しています。