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「美人ではないから大丈夫」と思って紹介したはずが…

 驚いたのは、義父の最後の愛人を紹介したのが、母自身だったことだ。義父は愛人とまではいかなくても、色々な女性と遊んでいた。母は義父がいい男であることを認めていたし、男が多少遊ぶのは問題ないと思っていた。 

写真はイメージです ©iStock.com

 しかし、その数が多すぎたことで、当時スナックのママをやっていたその女性を紹介したのだという。「飲みたくなったらこの店で飲みなさいよ」と。

 母の中では、そのママなら大丈夫だろうという思いがあったそうだ。母はその女性を、それほど美人ではないと思っていた。しかし、その思惑は外れ、義父はその女性にはまってしまった。母にすれば、美人でもない女を選んで、自分を捨てようとしていることが許せなかった。自分よりも美人だったらまだ納得できるのに、と言っていたそうだ。

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 最後のその愛人は、母とは真逆の静かな人で、店に来る男性たちにモテていた。しかも、その女性にも旦那さんがいたのだという。母はその男性の自宅まで行って、「お前の奥さんをどうにかしろ!」と迫ったが、「俺にもどうすることもできない」と言い返されたらしい。

 義父の浮気に耐えられなくなった母は、義父の会社のトラック置き場で、重機を運転して色々な物を壊して、警察沙汰になったことまであったそうだ。

 その愛人が経営しているスナックでも、母は義父と愛人と3人でケンカになり、警察沙汰になった。

 物静かな義父とは対照的に、母は思ったことを誰に対してもはっきり言う人だった。だから、夫婦の事情をよく知らない人には、母が悪者に映っていたこともあったそうだ。

 当時、母は周りの人たちにも、義父を殺して自分も死ぬと言っていた。周りからは、そんなこと冗談でも言うもんじゃないと諫められても、「私は本気だから、死ぬ場所も決めてある」と言っていた。

 毎日のように飲みに出かけていたが、事件当日の1週間ほど前からは、ぱたりと姿を見せなくなった。周りから説得されて、決心が揺らぐのが怖かったから1人でいたのではないだろうか。

 母は義父を殺したあと、仲の良かったこの女性にメールで、義父を殺したこと、自分もこれから死ぬことを伝えた。そして、合宿所にいる僕に連絡して欲しい、と伝えた。

 そのあと、飛び降り現場の近くにある、馴染みの中華屋の駐車場に車を停めて、再びこの女性に連絡した。この女性は何度も母に電話をしたが、一度も出なかったという。それで慌てて合宿所にいる僕に連絡をしてくれたのだ。