あるいは中国の検索サイト「百度」でシアヌークビルと入力すると、「シアヌークビル詐欺エリア」「シアヌークビルで中国人がどれだけ死んだのか」といった恐ろしい言葉が検索候補に出てくるのですが、ラオスは北部の国境エリア以外は見当たりません。実際にビエンチャンに在住する中国人のSNSグループを見てみると、いたって平和な様子が伝わってきます。
ビエンチャンには闇カジノ的なゲームセンターもあります。が、搾取されるものというより、数年前に中国で禁じられたものが、今も懐かしく残されている程度です。
中国のモノが流通することで、購入の選択肢が増えるという側面も
「治安的には大丈夫でも、ラオスを中国人が乗っ取っていいのか」と思う読者もいるかもしれません。ラオ三江国際商貿城は先に書いた通り、ラオス政府から50年間のコンセッションを受けています。周辺の契約エリアから外れた場所には、中国の業者がやりくりしてビルを建てたところもあるでしょう。
しかし、日本のガチ中華エリアもそうなのですが、突き詰めれば外国人が住んでもルールを守り、納税を行っていれば問題はありません。
ビエンチャンはメコン川に面していて、対岸はタイ。架かる国境の橋で、日本からビエンチャンに送られた京都市バス車両が走るのは、知る人ぞ知るところです。でもビエンチャンの人は、大きな買い物はビエンチャンではなく、タイのウドーンターニーという街で行います。安いし種類も多くて魅力的なのだそうです。
逆にいえば、現地の人々にとっては、ビエンチャンで売られるものにあまり魅力を感じないわけですね。
そこに中国人オーナーがやってきて、中国の商品を売っているのです。例えば街中の中国雑貨ショップでは、地元のラオス人学生が商品に目を輝かせている場面を見かけました。中国のモノが流通することで、購入の選択肢が増える。これはいいことだと思うんですよ。
ビエンチャンの一部はガチ中華エリアになっているし、なんなら中国から高速鉄道が走る線路も繋がっていて、中国人観光客も乗っています。でも、中華エリアは西川口や池袋のようなごく一部であり、現地の中国人が納税などのルールを守っていればアリなのかなあと思います。
殺伐としたニュースを聞かないところなので、安心して中国のちっとも“バエない”庶民的な空間を体感できます。ラオス旅行で異文化体験といいますか、ガチ中華体験をするのも面白いと思いますよ。
写真=山谷剛史
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