1ページ目から読む
3/3ページ目

 北方さんの熱弁の結果、金城さんと船戸さんの2作受賞が決まった。

〈きちんとしたことを言えば、きちんと通していただけるのだと感じたね〉

船戸与一さん(左)宮部みゆきさん(中)と直木賞授賞式で ©文藝春秋

文壇バーで聞いた先輩作家の言葉

 ドラマティックな展開で受賞作が決まったあと、もう一つ、見せ場があった。

ADVERTISEMENT

〈コロナ禍の前までは、選考会のあとに「クラブ数寄屋橋」という、いわゆる文壇バーへ流れるのが通例で、指定席にドンと腰をおろした黒岩さんが、俺に「来い」と言う。怒られるのを覚悟していたのだが、

「お前な、俺は選考がひっくり返ることは何度か見てきた。でも新しい選考委員が大演説をぶち上げて、ひっくり返したのは初めて見たぞ。面白いな、お前は」

 とおっしゃった。その言葉を聞いて、選考会では虚心に感じたままを言わないと駄目だとわかった〉

 4月10日発売の「文藝春秋」2023年5月号、「文藝春秋 電子版」(4月9日公開)に掲載される「北方謙三『直木賞血風録』選考委員23年の思い出」では、他にも、井上ひさしさんのブロックサイン、五木寛之さんに「君はいつも孤立無援だね」と言われたことなど、直木賞の選考にまつわる数々の秘話を明かしている。

 さらに、若いころ新宿ゴールデン街で中上健次、立松和平と殴り合った話など、ハードボイルドな人生を振り返った。

文藝春秋

この記事の全文は「文藝春秋 電子版」で購読できます
「直木賞血風録」選考委員23年の思い出