なかには、知人らしき弁護士を連れて立会いに臨み、見積もりを見せて『これ、絶対ぼられてるよね!』と騒ぐ人もいますが、良識のある弁護士さんは、『これは正当な結果だよ』ときちんと援護してくれるので、それはありがたいですね」

部外者の同行以上に「困る」住民たち

 立会い時の部外者の同行は業者のストレスになりそうなものだが、北村さんは「彼らはまだ、きちんと準備しているだけマシ」と続ける。

「私らが部屋に到着しても、2割くらいの人はまだ荷物が残ったままです。『あともう少しで全部運び終えるから!』と悪びれるのならまだいいですが、『あれ、退去って今日でしたっけ?』と片付けにいっさい手を付けていない部屋も。こうした場合、人件費をプラスで請求して立会い日をリスケするか、オーナーや管理会社が直接部屋を確認するか、となるパターンが多いです」

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 住人側からすれば、退去専門の業者の関門をスルーし、管理会社やオーナーのチェックだけになるのはラッキーと思えそうなものだが、そう甘くはないらしい。

「正直、私たちが管理会社との間に入ることで、お目溢ししているケースも多い。たとえば金銭事情が厳しそうな学生なら、小さな傷の2、3箇所は管理会社に交渉して費用を負担してもらったり。これから海外に飛ぶ人だと、あまりに高額な費用を請求してそのままトンズラされるのが一番痛いので、現実的に払える額を聞き出して管理会社やオーナーと交渉することもあります。

 こちらもけっして鬼じゃないので、膨大な請求が怖いなら無難に立会いを受けるのが得策だと思いますけどね」

 下手に立会い業者の目をかいくぐろうとするのは、やめたほうがよさそうだ。

©AFLO

「喫煙」「ペットの飼育」はたいがいバレる

 管理会社やオーナーによっては禁止されている「喫煙」「ペットの飼育」を隠れて行っていた人にとっては、退去時の立会いはいっそう肝が冷えるものだろう。その場しのぎで一日中換気し続けてみたり、消臭剤を部屋にぶちまけたりしてやり過ごそうとした経験のある人もいるはずだ。

「そうした対策をしても、たいがいはバレます。特に煙草は部屋の黄ばみだけでなく、多くのマンションについている24時間運転の換気扇に対策のしようがないニオイがこもり続けますから。その場合、壁・天井はすべて張り替えで、部屋の消臭作業が必要となり、1Rでも軽く20万円はかかります。

 ただ、これも意地悪ではなく、次の入居者にもしアレルギーや持病があった場合に備えて丁寧に確認しないといけない部分なので、ご理解いただきたいです」