唯一スキャンダルに触れたのは黒岩氏自身による決意表明の冒頭だった。
「乗り越えることができたと思っていました」
「知事という公職にありながら、そういう不適切な関係を続けるのは良くないと思い、しっかりと誠意を持って(A子さんと)お話をして、そしてご理解いただけたものと思っていました。ところがその後、(A子さんが)我が妻に私が送ったメールをコピーしたものを大量に送りつけてこられました。妻は愕然とし、大変な衝撃を与えてしまいました。私は心から妻に謝罪をし、一生かけてこのつぐないをしていくんだとそんな話をした。そして乗り越えることができたと思っていました」
スキャンダルについて触れたのはわずか5分ほどの時間だった。その中で黒岩氏はA子さんとの不倫は過去のものであると強調し続け、現在の自分は潔癖であると訴えた。
「審判を仰ぎたい」と述べた一方で、有権者から身を隠していたのは選挙戦最終日も同様だった。8日土曜日の活動予定について、黒岩氏はリモート集会と選挙カーによる遊説とのみ公開。街頭演説の予定について選挙事務所に問い合わせると、「今日は勉強会をするので街頭に出る予定はない」との返答だった。
投票日前日に支持を訴えないのは異例
「投票日前日は各候補にとって有権者に支援を訴える最後の機会。どの候補も街頭演説に出て直接有権者に訴えるのが選挙の定石です。しかし、黒岩氏は選挙戦最終日であっても街頭演説をしなかった。選挙活動最後の、事務所前で30人ほどの支援者の前で立ったのが、報道後有権者の前に姿を現した瞬間でした。投票日前日は土曜で人出も多く、支持を訴える絶好の機会のはずでした。それを自ら放棄するというのは、異例の事態と言っていいでしょう」(前出・神奈川県政担当記者)
こういった黒岩氏の対応に対し、SNS上では「市民の声を受け入れようとしていない」「公人としての意識が低い」などといった批判の声が上がっていた。過去の不倫報道以降、黒岩氏はこういった批判から逃れるように身を隠し、選挙活動を終えたのだった。