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 黒岩氏がフジテレビキャスター時代に11年間にわたって不倫関係にあった女性がいたことを報じたのは「週刊文春」4月13日号。公職に就く前とはいえ長年不倫をしていたことに非難が集まり知事の資質を厳しく問われた。とりわけ物議を醸したのは、不倫相手のA子さんに送ったメールの文面である。

「ニュルニュル~」

「A子の料理ってどんなかな?アワビにバナナをさしたやつとか」

「生放送の前のナマだよ~!!ニュルニュル~」

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 これ以上はとても引用できる内容ではない。SNSには「見るものすべてを不快にさせるテンプレのような内容」「同じ文面が彼氏から送られてきてもブロックするレベル」といったコメントがあふれた。

 そんな身の毛もよだつ黒岩知事の不倫メール記事が出たのは、投票の3日前。選挙戦真っ只中の黒岩知事の対応は早かった。SNSに、週刊誌に自身の醜聞が載ることを発売前に予告し衝撃を緩めようとした。報道直後に行われた記者会見では、黒岩氏はA子さんと不倫関係にあったことを認め、A子さんと妻に対する謝罪の言葉を述べた。知事選の進退については、「真実の姿を見てもらい、審判を仰ぎたい」と撤退しない考えを示した。

「週刊文春」4月13日号

「自民党ほかの推薦を受け、無所属で出馬。二番手と思われる共産党推薦の岸牧子氏には前回の県知事選で圧勝しています。4月1日には菅義偉元首相が応援演説に駆け付け、地盤も固い黒岩氏の4選は盤石です。いかに文春の記事が衝撃的とはいっても情勢への影響はわずかだったと思います」(神奈川県政担当記者)

 そういう情勢を把握していたのか、投票日までのわずかな時間、黒岩氏が「真実の姿」を本当に神奈川県民に見てもらうつもりがあったのかは疑問だ。それまで県内を精力的に遊説し、頻繁に街頭に立ち支持を訴えて回っていたのに、不倫記事が出るや、にわかにその姿を県民が目にする機会は途絶える。

絶えた街頭演説

 選挙活動はもっぱらクローズドなリモート集会や選挙カー。自身のSNSに対して返信できるアカウントを制限し、まるで外部の非難をシャットアウトしているような態勢をとっていた。

 かろうじて人目に触れたのは6日の夜、厚木市文化会館で開かれた総決起集会と名付けられた集まり。スーツ姿の関係者らしき姿が目立つ集会では、厚木市長の山口貴裕氏らが来賓として駆け付けたが、スキャンダルについてはタブーであるかのように一言も触れられることはなかった。