大谷から三振を奪ったサトリアが「野球を始めたきっかけ」は“トイレ”から!?
サトリアは大谷翔平を三振にしたボールを、満面の笑みでベンチで掲げて見せていた。彼に「いま日本ではあなたがいちばん有名な野球選手かもしれないから」と伝えると、笑顔が伝わってくるような明るい返事が届いた。
「それは僕もわかるよ。もう大興奮だよ。ものすごく大勢の日本人が僕にメッセージをくれるんだ。本当にありがたいことだよ」
WBCの後、サトリアはSNSの名前の欄にカタカナ表記を追加した。日本のファンからの声援の多さに対応してくれたのだろう。
「僕が野球を始めたきっかけは、かなり笑える話なんだよ。あのね、両親と弟とオストラバ(チェコ第3の都市で、サトリアがプレイするアローズ・オストラバがある)に引っ越してきたら、家のすぐ隣が野球場だったんだ。
ある日、僕がトイレに入っていたら、父さんが突然ドアを開けて、スポーツでもするかって尋ねてきた。僕が、『うん、まあいいけど』って言ったら、次の日野球場に連れて行かれた。それが6歳の時だった。それまで僕は他にスポーツをしたことがなかった」
まさかのトイレから始まったサトリアの野球人生。お父さんは野球をしたことがあったのだろうか。
「いやいや、全然。でもあそこにはレストランもあったから、そこでグラウンドで何をしてるか見て、面白いと思ったから僕を野球に連れていったんだと思う」
先発が回ってきて「自分ができる最高のプレイをしよう」
家の隣にグラウンドがあれば、たしかに上達しやすいだろう。しかし、そこから日本まで野球をしにくるとは誰が予想しただろうか。サトリアは、自分が日本戦で先発することをあらかじめ知っていたのだろうか。
「チェコにイェセニーキという僕の大好きな山があるんだ。そこで代表合宿をした時、監督が僕に日本戦で投げてほしいと言っていた。でも僕が先発という話ではなかった。先発はマレク・ミナジークの予定だったけど、前日にあった中国戦でミナジークも登板したから規定で投げられなくなって、僕に回ってきた」
イェセニーキは、チェコ共和国北東部、温泉のある山地だ。彼の住むオストラバにも近い。チェコ代表がこの地で合宿をしたのは1月のこと。初めてのWBCと9月の欧州選手権を控えた2023年のスタートだった。先日サトリアがSNSに投稿した、パートナーとの間に新しい命が宿ったことを伝える写真も、ここで撮影されたものだ。
「先発でも、不安はまったくなかったよ。楽しみな気持ちだったけど、もちろん緊張した。自分がどんな経験をしてきたか、どんな能力があるか、自分でちゃんとわかっていると思って試合に向かっていった。あの場所で、自分ができる最高のプレイをしよう、それで通用するかどうかだ、って」