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 そしたらゴールデン街に旅館があったわけ。そこへ入ってね。1部屋に、布団が2枚1組になって敷いてあって。「どうぞ。ここ」って言われて。

 それでさ。その自衛隊帰りが立ってるわけだよね。「どっちを選びますか?」って言われた。ガッチリしたのと、やせ細ったのがいた。私はやせ細ったほうが趣味だからこっちのほうがいいって指定したら、学生服のその彼がね、じゃあ君はこの人と一緒に寝なさいっていうようなことになってさ。それで私が寝ていると、あとからその子が入ってきました。それで朝までぐっすり眠っていて私は何もしないで、もう朝目が覚めたらいなかったのね。

――本当に始発で帰ったのかな?(笑)

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 いない。その自衛隊の人たちはもう2人ともいないわけ。それで友人は非常に楽しかったって言うんだよね。「もう上から下から舐め回しました」とかなんとか言って(笑) 私はなんにもしないでただ眠っただけだった。そんなことがあってお友達になって。彼はいろいろなことを誘いに来たわけね。「昼がちょっと暇だから銀座へ遊びに行かない?」なんて誘われたこともあった。

友達が戻ってこなくなり「ジー…」という音が

 私はまだそんなに一人で遊びに行くなんてことは全くしたこともなかったから、銀座の昼間はどんななんだろう? なんて付いていったら銀座の路地裏のバーだった。階段を上がっていった狭いところにある店で、中へ入ったらカウンターで洗い物をしているオジさんがいて「あ、そこへどうぞ」なんて窓際のソファー席に案内されて、2人並んで座っていたのね。そしたら友達は「ちょっとトイレに行く」と言って立ち上がった。それっきり戻ってこないんですよ。

©AFLO

 どうしたんだろうな? と思っていたら、オジさんが仕事が終わったらしくて「申し訳ないね。あんた一人になって」なんて言ってそばへ寄ってきて「コーヒーでも飲む?」なんて言ってね。コーヒー淹れて持ってきたんですよ。それでなんか知らないけど向こうが何か話しかけてくるのに答える程度のことだったんですけれども、こっちが話題を持っていかないからあんまり話は弾まない。

 しかし時々ジー……っていうような音がするんですよね。なんだろうな、この音って。ちょうど私がいるところは日が当たってて、そのオジさん側は暗い。その人が何か用事があって立ち上がったときにひょっとあたりを見渡してみたら、壁の扉の上に穴が開いてるんだ。あ、きっとあそこにカメラが仕込まれている! 私を撮ってるんじゃないかと。

 急に恐ろしくなっちゃって帰ります! ってそのまま帰ってきたんですよ。走ってね。追ってはこなかった。まあそんなようなことがあってね。結局、彼が私を連れて歩くというのは、彼にはそういうようなお得意さんが何人かいて、若い子を連れてきなさいよって言われているわけだ。連れていって、そこで彼がいなくなると後はどうなる? ということなんですね。あるいはそういうふうなことをやって小遣い稼ぎにしていたかもしれない。そんなようなことなんですよね。

「今晩、あの人と寝てくれない?」

 それで、あるときね。築地に割烹料亭があるんだけれども、そこにちょっと知り合いが来ているから行ってみないって切りだされ、割烹料亭で泊まることになった。築地の明石町〔中央区〕にあるといったら立派なものですからね。ああ、そういうところに一度行ってみたいな、料理もうまそうだなと思ってさ、行ったのね。

 そしたら、8畳くらいの部屋が2部屋あって手前の廊下のところでそいつが「今日は友達を連れてきました」って言って、私も「どうぞ、よろしく」なんて挨拶をした。先方が「先にお風呂へ行ってきなさい」なんて言うから、お風呂へ入っていたらさ、湯船の中で彼が寄ってきてね、「今晩、あの人と寝てくれない?」って言うわけだ。え! そんな約束も何にもないのに! と思ってさ。もうビックリしちゃってね。

 すぐそのあと、体も拭かずに外へ出て服を引っ掛けるようにして走って逃げて玄関まで来たら、女中、仲居さんたちがビックリして「どうしました!?」ってみんな大勢集まってきて。なんかもう大変だけど、とにかく外へ走り出て。そのまま走って逃げてきたんです。その後どうなったかは分からないけれども。

――その友人はやり手だったんですね。