1ページ目から読む
3/3ページ目
なぜディズニーは差別的表現を消さなかったのか?
長年にわたるこういった差別的表象に関する批判を受けて、ディズニーは映画の冒頭に「この作品には、人々や文化に対する、否定的な表現や横暴な振る舞いを描写したシーンが含まれています。このような固定観念は作品制作当時でも誤りであり、現代においても誤っています。
ディズニーでは、当該箇所を削除するのではなく、こういった偏見が社会へ与える悪影響を認識し、そこから学び、議論を促すことで、多様性あふれる社会の実現につなげていきたいと考えています」というメッセージを表示するようになりました。
映画を鑑賞する機会をなくすのではなく、むしろ考えることを促す。この作品を見る家族が映画内の差別的表象をきっかけにアジア人とアメリカ社会との関係性を議論することを促すのは、いい取り組みなのではないかと感じます。
アジア人差別の表象に関する批判は『わんわん物語』という作品の価値を否定しているわけではないのです。動物のアニメーションやストーリーのテンポ、音楽の使い方など、多くの革新的な要素が詰まった『わんわん物語』は、これからもアニメーション映画界ではリスペクトされる作品であり続けるでしょう。批判への対応は、キャンセルか許容かの二択ではないのです。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。