とくに88歳で亡くなる前の数年間は寝たきりだったので、家を改築して母親の部屋をつくり、介護用ベッドも購入し、山崎さん夫婦がつきっきりで面倒を見ていた。費用の負担だけでなく、介護のために息抜きする時間さえなかったという。山崎さんが振り返る。

「でも、一番上の兄は長男なのに『仕事が忙しい』といって母の面倒を見ず、お金もいっさい出そうとしない。次男も同じでした。それなのに、母親が亡くなった途端、2人の兄が『遺産相続は大変だから俺たちも手伝う』といってしゃしゃり出てきたのです」

遺産総額がはっきりしないワケ

 母親には総額数千万は下らない現金や有価証券などの金融資産があり、実家のあった土地などの不動産も所有していた。その遺産を「自分たちにもよこせ」と2人の兄が主張してきたわけだ。

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「母が残した遺産総額はいくらだったのか、いまもハッキリしていません。なぜなら、母の葬儀に乗じて長男が弁護士や銀行の担当者と勝手に話を進め、預金通帳や印鑑、証券会社の口座などを押さえてしまったからです。総額を聞いても教えてくれないんです」

 もちろん、山崎さんも自分たちが母親の面倒を見てきたこと、その介護に多くの費用や時間がかかっていることを主張したが、2人の兄はまったく聞く耳を持たなかった。最終的に山崎さんが受け取ったのは、法律で定められた割合の法定相続分だけだったという。

「お金が絡むと、人間って家族同士でもこんなに汚くなるんだということがよくわかりました。その後、兄たちとは法事で顔を合わせることはありましたが、基本的に関係はいっさい断っています」

※写真はイメージ ©iStock.com

父親がつくった借金のせいで一家離散

 もうひとつ家族間でも金銭トラブルになりやすいのが、異性が絡んだとき、男性なら「女」に夢中になったときかもしれない。

 映像制作会社で働く田島栄斗さん(仮名、35歳)の実家は地方の中核都市にあり、父親は日本を代表する企業の一次下請け会社で役員手前まで出世し、母親は東京の名門女子大を卒業したお嬢様だった。