ジャニーズWEST重岡大毅が演じる“王道ツンデレ”
一方、芝居の上手さ・器用さで関係者から高い評価を得ているのが、ジャニーズWESTの重岡大毅。関西出身、端正な顔立ち、そして高い演技力は、元V6の岡田准一や、元関ジャニ∞の錦戸亮を彷彿とさせる。
春ドラマでは芳根京子主演の『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)に知的財産部課長の北脇雅美役として出演している。第1話では芳根演じるヒロイン・亜季が新製品の情報漏洩をしたとし、当初は亜季を切り捨てようとする冷酷さを見せていたが、亜季の発言をヒントに特許を奪い返す策を見つけ出す頼もしさとツンデレぶりを見せ、ファンを大いに沸かせた。
ただ、わかりやすいステレオタイプのツンデレぶりは、これまでの重岡の豊富なキャリアや実力を考えると、少々もったいない気もする。
なぜなら宮藤官九郎脚本『ごめんね青春!』(TBS系/2014年)ではチャラくておバカで、情けない等身大の高校生男子像を自然に演じていたし、多部未華子主演の『これは経費で落ちません!』(NHK総合/2019年)ではとびきり可愛い“山田太陽スマイル”で視聴者の心をつかんで一躍人気者となった。
かと思えば、吉高由里子主演×大石静脚本の『知らなくていいコト』(日本テレビ系/2020年)ではヒロインの元カレのクズ男をときに冷酷に、ときに狂気を交えて見事に演じ切ったのだ。
そんなコメディもシリアスも、陰も陽も、凡庸も狂気も巧みに演じ分けられる重岡の真骨頂は、『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系/2022年)。
冤罪で人生に絶望し、死ぬ前に蟹を食べようと謎の人妻(入山法子)と共に北海道を目指す。しかし死に向かう絶望感と、しかし踏み切れない意気地のなさ、快楽に溺れる単純さ、旅を楽しんでしまう呑気さという人間の様々な矛盾・多面性を表現してみせた。事務所的な推し度合は不明だが、ジャニーズという冠をなくしても俳優仕事の需要が途切れない一人だろう。