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決裂状態だった明菜とワーナーが歩み寄り…

 2月に入るとファンクラブ会員向けにグッズの予約販売を開始。4月には会員から質問を募集し、明菜がDJを務めて、ラジオ形式の音声放送を実現した。

 デビュー当時の1人暮らしのエピソード、好きな食べ物や花の話などを時に笑いを交えて話し、名盤の誉れ高い85年のアルバム「BITTER AND SWEET」から1曲を選んで約20分。語り口は優しく、どこか儚げで、ノスタルジーを感じさせるものだった。

全盛期の明菜(映画「中森明菜イースト・ライヴ」の公式HPより)

 そして、次なる企画として発表されたのが件の映画の音声メッセージだった。

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「長年のファンにとって驚きだったのは、彼女とは決裂状態だとみられていたワーナーとの関係です。明菜の80年代のすべての楽曲の版権を持つワーナーは、全盛期の明菜像を作り出した古巣ですが、その後、不信感から袂を分かち、一時明菜はステージで、『“ワー”で始まるレコード会社が作っているのは買っちゃダメよ』と話すほどでした。ところが、今回の映画では、お互いが歩み寄る形で企画が実現されたのです」(同前)

 彼女の不信感の芽生えは初代ディレクターがペンネームで彼女に提供した隠れた名曲「温り」を巡る因縁に遡る。その経緯をはじめ、彼女をこれまで支えてきたスタッフや家族の献身や葛藤については拙著に記した。

今月発売された西﨑氏の著書『中森明菜 消えた歌姫』(文藝春秋)

 比類なき才能を持った歌姫の伝説は、新たな局面を迎えようとしている。恩讐を越えて、いまゆっくりと、しかし着実に進む復活劇の行く末に期待したい。