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 国別対抗戦は、かなだいが、選手としてファンに見せた最後の演技となった。長年フィギュアを取材してきたスポーツ紙記者は感嘆の声を上げた。

「高橋選手はアイスダンスに転向して3季目で最高の演技を披露しました。3月に37歳になりましたが相当鍛えたのでしょう、村元選手をリフトで持ち上げるときなどの安定感が増していました。今季は終盤息切れする場面もありましたが、国別対抗戦では、それもなかった」

高橋大輔 ©文藝春秋

思い出の地で、16年ぶりの『オペラ座の怪人』

 2人が、選んだフリーダンスのプログラムは『オペラ座の怪人』。高橋が、国別対抗戦と同じ東京体育館で行われた2007年世界選手権で銀メダルを獲得したときの曲だった。このスポーツ紙記者は、その大会も取材していた。

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「当時『もう滑れないかと思った』と言うほど力を出し尽くした演技に、場内が総立ちになりました。あれから16年、同じ場所で拍手を受ける姿はファンには感慨深かったはず。そのころジュニアだった村元選手もフリーの前に映像を観直したそうで、『すごいなと思った』と言っていました」

 9歳の時からスケートを始めた高橋。2010年のバンクーバー五輪では、日本の男子シングルス選手として史上初めてとなる銅メダルを獲得し、世界選手権でも優勝するなど日本男子フィギュアの隆盛を築いた。一度は現役を引退したが、2018年に復帰すると、アイスダンスに挑戦。選手として最後に見せたのは、キャリアハイの演技だった。高橋にこれほどふさわしい終わりはないのかもしれない。