5月1日のメーデーはフランスでは労働祭の休日である。今年の初めから受給年齢引き上げなど年金改革反対の大規模なデモやストが何度もあった現地では、マクロン大統領の強引な姿勢が火に油を注いで反発がさらに強まっている。
歴史的な日になるかもしれない、ということで、出発点のレピュブリック広場に行ってみた。
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14年ぶりに全組織が合同でデモ。現場は…
フランスには大きな全国組合連合が8つある。穏健派から急進派まであって、このところずっと分かれて集会やデモをしているが、今回は、年金改革反対運動で全組合連合の共闘が行われていることもあり、14年ぶりに全組織が一堂に会しての統一メーデーとなった。
レピュブリック周辺の地下鉄の駅は閉鎖されているので、2駅前でおりて1kmほど歩く。地上に出るとすぐ前に、日本人観光客もよく来るセレクトショップ「メルシー」があった。店名「Merci(メルシー)」の上に「ノン」と落書きがしてある。
ここはバスチーユ広場と結ぶ大通りで報道によればデモコースになるはずだが、街は閑散としている。ほとんど車も走っていない。ただ、遠くから、歓声やクラクションの音、大音量のロックの音楽、時々爆竹がきこえる。
祭日で店は休みなのだが、ショーウィンドウの上には厚いベニヤ板がうちつけてあって落書きされている。「マクロン出ていけ」とあるから、3月23日のデモの時に書かれたものだろう。
年金改革法案は3月16日に最終案が上院の元老院で可決後、国民議会(下院)にもどされて強制採決された。
「強制採決」というのは日本の報道での表現で、国民議会に限り内閣が責任を取ると宣言すると審議は停止され、内閣不信任案が通らなければ可決とみなされるという現行フランス憲法49条3項にある独特の制度である。民主主義の否定だと批判されており、マクロン大統領自身、極力避けるといっていた。ボルヌ首相は使用に消極的だったという報道もある。
内閣不信任案否決のあと、22日にフランスの2大テレビ局でインタビューを受ける形でマクロン大統領は強制採決について弁明したが、共和党を含めた野党、組合こぞって大統領は「現実を見ていない」「国民を軽蔑している」「自己満足」と批判した。
そのため翌23日に行われたデモでは、年金改革反対に加えて、このような強権姿勢に対する反マクロン・民主主義の擁護がスローガンに加わった。
現在、マクロン与党は上院に当たる元老院・下院に当たる国民議会ともに過半数を割っているが、元老院では伝統右派の共和党の修正案を受け入れて可決している。仮に共和党に造反議員がでても採決していれば通っただろう。穏健派諸組合にとっては、「引き際」の契機になったかもしれない。マクロン大統領はそれを自ら壊してしまったともいえる。