堅苦しい文章も分かりやすくしてくれる
では、得意分野の要約では、どんな利用ができるだろうか。
青木主査は「国の通知文書は堅苦しくて、一読して何を書いてあるのか、分からない場合もあります。読んでいるうちに、頭がこんがらがってしまうことも。これを要約してもらうと、めちゃくちゃ分かりやすくなります。『なるほどそういうことか』と、もう一度読み直したら、頭に良く入ります。要約の間違いがあるかもしれないので確認するのですが、私には見つけられませんでした。すごいなと思いました」と感動を口にする。これは、かなり業務の助けになりそうだ。
寒川室長は「要約については、長い文章を200字以内とか40字以内とかにするよう指定することもできます。市の広報誌に掲載する原稿にはちょうどいいと感じています。パンフレットの文章にも使えます。市長からは『役所の文章はなぜあんなに堅苦しいのか。もっと分かりやすくしろ』といつも言われます。高齢になると、活字を見るだけでも嫌だという市民もいます。ChatGPTを使えば、そうした方にとっても分かりやすい文章になるはずです」と語る。
人間が魂を入れてやる必要があるし、使う側の能力も必要になる
寒川室長が自身も使いたいと考えているのは、挨拶文の原稿作成だ。
試しに青木主査が「あなたは市の課長級職員です。新規採用職員の研修冒頭でのあいさつ文を考えてください」とChatGPTに入力した。
やはり、1分も経たないうちに、コンパクトにまとまった文章が表示された。
寒川室長は「簡単に出てくるでしょう。ポイントを押さえていて、すごいなと思いました。ただ、中身が薄い。課長の思いが入っていないので、人間が魂を入れてやる必要があります。異動から間もなくて、事業をまだ深く理解できていない時期の挨拶文作成には、おそらく役に立つと思います。部下に頼めば、それだけ仕事を増やしてしまいかねませんし」と補足した。
こうした「遊び」で、寒川室長らが「使える」と判断したのは、チームで検討し始めてから1週間ほど後だった。
全庁で導入するための準備を進めているうちに、パナソニック、ベネッセと利用を発表する企業が続く。「やるなら自治体で最初に打ち出した方がいい」(寒川室長)との判断で、横須賀市は4月18日、20日から「全庁的な実証活用」を行うと発表した。チームでの検討開始から半月という早さ。記者発表の文案もChatGPTで作成した。
今後は導入1カ月後の5月19日を待って、検証を行う。約3200人の正規職員など4000人が使っており、通信履歴の内容を解析したり、職員アンケートを取ったりしたい考えだ。「ChatGPTを使うことで、こんな発想が生まれたなどという事例集ができたらいいなと思います」と青木主査は意気込む。「何を回答として求めるかの質問によってChatGPTの回答は違ってきます。使う側の能力も必要になるのです」と寒川室長は話す。このため、青木主査は「どうやったら使いこなせるかのコツも広めていきたい」と言う。