政府に表彰された「書かない窓口」
そのうちの一つに「書かない窓口」があった。
引っ越しの時、ウェブ上の質問に答えると、必要な手続きが分かり、オンラインで申請書の作成もできる。住所や名前を一度入力したら、複数の申請書も作成できた。これは2022年、内閣府の「夏のDigi田甲子園」で4位に入った。デジタル田園都市国家構想の一環として、政府が自治体の取り組みを表彰しているのである。
他にも、旧軍港を持つ広島県呉市、長崎県佐世保市、京都府舞鶴市と一緒に「デジタル・ガバメント推進広域研究会」を結成し、申請に多くの紙が必要だった生活保護の手続きをデジタル化する試みを行うなどしてきた。
そしてChatGPT。検討を始めるよう言い出したのは上地市長だった。2023年3月29日のことだ。
「面白いから行政で活用できる方法を考えろ」
「ちょうどいろんな紙面にChatGPTに関する記事が出ていた時で、インターネットが出現した時のような効果があるというような報道がなされていました。『面白いから行政で活用できる方法を考えろ』と指示を受けました。ただ、年度末で人事異動の真っ最中だったので、週明けの4月3日に検討チームを発足させました」
中心となったのは、市役所に入るまでIT関連の仕事をしていた青木伸広主査ら5~6人の若手職員だ。
まずはセキュリティの検討から始めた。
質問として入力した内容を、AIに学習されてしまうことが、ChatGPTならではの問題としてクローズアップされている。二次利用されたら情報漏洩につながる。
青木主査は「学習を回避する方法として、市役所からは自治体向けのチャットツールを経由してChatGPTにつなげるようにしました。こうしたやり方だと、二次利用されません。ChatGPTを開発したOpenAIの規約にそう書いてあります」と話す。
そもそもの大前提として、個人情報や機密情報を入力しないというのはChatGPT以前の庁内ルールだ。そうした情報セキュリティ研修は全職員に必須とされている。
次に検討したのは、何に使えるかだった。寒川室長は「皆で楽しくChatGPTで遊びました」と話す。
青木主査が「遊んだ」内容を再現してくれた。
「キャッチコピーを考えてみたいと思います。横須賀市はアーバンスポーツを推進していて、ストリートダンスグランプリが開催されました。このキャッチコピーを『10個考えて』と入れてみましょう」
今年から横須賀市で始まった「高校ストリートダンスグランプリ」である。部や同好会で活動する高校生が参加し、1~3月に予選大会と決勝大会が開かれた。出場校は全国募集したが、初回とあって関東圏から37校・42チームが出場した。
青木主査が画面に入力して、少し待つ。すると、1分も経たないうちに、以下の10通りのキャッチコピーが表示された。