1977年、ほかの組とのケンカをきっかけに、神戸刑務所に収監された元山口組系組長の竹垣悟(たけがき・さとる)氏。初めて入る刑務所で体験した「驚きの生活」、そして、そこで学んだこととは? 新刊『懲役ぶっちゃけ話 私が見た「塀の中」の極道たち』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

1回目の懲役を終えた頃の筆者(写真提供:竹垣悟)

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名門・神戸刑務所に「飛び級入学」

 私が初犯で入った神戸刑務所は兵庫県明石市にあり、通称「神刑」という。現在、収容定員は約2000人という大規模刑務所で、全国75施設のなかで5番目の規模を誇るが、私が入った1977(昭和52)年当時は建て替え前で、規模もいまの半分程度だった。ちなみに一番の規模は府中刑務所である。

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 意外に知られていないが、刑務所は犯罪歴や刑期の長短によって、次の4つに分けられている。

◎LA級刑務所:初入者で、執行刑期が10年以上の者を収容する刑務所。山形、千葉、長野、岡山、大分の5施設。

◎A級刑務所:初入者で、執行刑期が8年未満の者を収容する刑務所。黒羽、静岡など各地にある。

◎LB級刑務所:主に再入者で、執行刑期が10年以上の者を収容する刑務所。札幌、旭川、宮城、府中、横浜、岐阜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、徳島、高松、福岡、長崎、熊本の16施設。

◎B級刑務所:主に再入者で、執行刑期が10年未満の者を収容する刑務所。網走、青森、府中、横浜、名古屋、大阪、京都、神戸、広島、福岡など各地にあるが、神戸刑務所のように10年以上(LB)の受刑者が収容されている施設もある。

 A級が初入者、B級が再入者で、その上にL(Long)がつけば長期刑ということになる。ごらんのとおり、B級はやくざの記事を扱う実話系雑誌でおなじみの刑務所となっている。初入者の私は本来、A級刑務所のはずだが、犯罪傾向が進んでいる者や現役やくざは初犯でも再犯刑務所に送られるのだ。

 何しろ私は矯正施設に入ること自体が初体験で、少年院にも行っていない。姫路は暴走族や愚連隊が多く、駅前をブラブラして恐喝するのがやくざの登竜門であったが、私はそうした経験すらない。鑑別所にこそ1回は行ってはいるが、独居であったため、ほかの受刑者と一緒に過ごす雑居房は初めての経験で、まるっきりの初心者である。少年院上がりをやくざの「エリート」とするなら、私は中学、高校を飛び級して、いきなりB、LB級刑務所という「名門大学」に入学するようなものだった。